「本学の教育改革について」――筑波大学(茨城県つくば市)が2018年1月10日、こんな文章を公式サイトに掲載した。名義は、永田恭介学長によるものだ。
「最近、インターネット上において、本学の人文社会系が他分野に吸収されるかのような情報が掲載されていましたが、そのような事実はありません」
フェイスブックで「某教授」情報が拡散
発表文はさらに、「本学の教育改革の取組内容については、本学の公式な情報発信をご参照いただきますようお願いいたします」と続く。筑波大はなぜ、突然こんな発表をしたのか。実はその直前から、フェイスブック上である投稿が拡散していた。
書き込みは1月7日夜、「筑波大学の某教授」から新年のあいさつを受けた、とする人物が、それを転載する形で行った。そこには、筑波大の「人文社会の全教員」が2018年4月から、「ビジネス科学」に吸収されることが決まった――という内容が含まれていたのだ。
筑波大大学院には「人文社会科学研究科」が存在し、人文科学・社会科学系のいわゆる「文系」の学問をまとめて扱っている。一方、「ビジネス科学」は社会人を対象にした「ビジネス科学研究科」を指すものとみられる。
問題の投稿にも言及があるが、国立大学をめぐっては2015年、文部科学省が出した「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」の通知をめぐり、いわゆる「文系廃止」問題が勃発した。文科省は「人文社会科学を軽んじているということでなく、またすぐに役立つ実学のみを重視しているわけでもない」(下村博文・文科相<当時>)などと釈明に追われたものの、各界を巻き込む議論となった。
筑波大にもその波が押し寄せたのか?――投稿は11日時点で1200人以上にFB上でシェアされたほか、異色の裁判官として有名な東京高裁・岡口基一氏がツイッターでURLを共有、そのつぶやきが5700件以上リツイートされるなど、ネット上で一時大きく拡散された。
「受験生に不安を与えないため」声明
そんな中で大学側が発表したのが、冒頭の文章である。「吸収」を否定するとともに、「『学際性』と『国際性』を両輪として、学生本位の視点に立って教育の質の向上を図るための教育システムの改革」に取り組んでいるとした上で、「詳細については現在検討中」であるとしている。
J-CASTニュースの取材に対して12日、筑波大は異例の発表の理由をこう説明する。
「インターネットの誤った情報について、受験予定者から問い合わせがありました。入試を直前に控えた大切な時期でもあり、受験生に不安を与えないため、今回の措置を取りました」
一方、問題の投稿にあった人文社会系について、「他分野への吸収、あるいは統合の予定は当面ないのか」と尋ねたところ、教育システムの改革を「現在検討中」であり、「それ以外の回答は差し控えさせていただければ」。具体的な改革内容については、「来年度に計画の概要を公表することを念頭に置いて、検討を進めています」とした。