賛否がある横綱・白鵬の「張り手」などについて、日本相撲協会の池坊保子・評議員会議長(75)が「(モンゴル人は)狩猟民族だからね」と述べたことを週刊文春が報じたところ、評論家の荻上チキ氏(36)が「何だそりゃ?」と大きな疑問を示した。
荻上氏は2018年1月10日放送の「荻上チキ・Session-22」(TBSラジオ)で文春の池坊氏の発言内容を取り上げた。「NGワードだらけ」「早くそういった文明論は滅びてほしい」とまで述べ、不快感を露わにしている。
「一括りにする議論がいまだに生存しているのか」
白鵬の張り手やかち上げといった取り口は17年12月に横綱審議委員会から「横綱らしくない」と批判された。だが、わずか2週間後の1月5日の稽古総見でも張り手を見せ、いっそう物議を醸した。
池坊氏の見解が報じられたのは週刊文春2018年1月10日発売号(18日号)。文春の直撃を受けた池坊氏は、白鵬の取り口について「(ルールが)ある以上は『張り手した』と、ガーガー(批判を)言わないで」と理解を求めた上で、「(モンゴル人は)狩猟民族だからね。勝ってもダメ押ししないと殺されちゃう。良い悪いは別にして、DNAかもしれないわ」と語っている。
これについて、荻上氏はラジオで「僕のアンテナに触ったので、そこだけコメントします」と言って見解を述べ始めた。切り出しは冷静な語り口だったが、すぐに「『はぁ?』じゃないですか」「久しぶりに見ました。『何々人は狩猟民族で』という説明の仕方」と不満を募らせると、歴史的な観点からこう語った。
「どの地域にもいろんな農耕、放牧、狩猟のスタイルなどがあるわけです。なのになぜ、『日本人は狩猟でなく農耕民族で』『どこどこは狩猟民族で』みたいな分け方をした上で、『だからこういう風な行動になるんだ』と一括りにする議論がいまだに生存しているのかが分からない」
話は止まらず、「『今あなたは農家じゃないよね』とか『あなたの祖先はどうだったのか』というようなことを紐解くこともなく、『日本人は農耕民族だ』みたいな語りにしてしまうのか。大半の人が農業をやらなくなって久しいじゃないですか」とした上で、「数千年前とかの時代の話を持ってきて、『我々は農耕民族で、あの人たちは狩猟民族で』みたいな、このピックアップの仕方と比較のタイミング」と違和感。さらに
「2018年になったんだよね?ということで、カレンダーを確認したくなるような話法でしたね」
と皮肉交じりに批判した。
「『民族』と『DNA』ってどんな関係があるんだ?」
荻上氏は、池坊氏が「DNA」を持ち出したことにも触れ、「『民族』と『DNA』ってどんな関係があるんだ? 民族はいわゆる文化的な慣習を共有しているグループのことであって、人種とはまた違うわけです。人種がDNAで規定できるかというと必ずしもそうではなくて、社会的な線引きに基づくところがあるわけじゃないですか」とやはり非難。そして、
「もうNGワードだらけだなと、そういう語り口がまだ残っているなと思って、早くそういった文明論は滅びてほしいなと思っている今日この頃でございます」
と呆れたように感想を述べていた。
痛烈に語り倒す荻上氏にリスナーは、「荻上チキ氏の糾弾は実に痛快であった」「今、荻上チキが激烈な批判をしてる。しかもおもしろおかしい」などとツイッターで感想を投稿している。
なお、池坊氏が「狩猟民族」の観点で大相撲について述べたのはこの時ばかりではない。17年11月23日の「直撃LIVE グッディ!」(フジテレビ系)では、秋場所中に黒星を喫し、土俵で抗議の仁王立ちをした白鵬に、「農耕民族はみんな仲良く。狩猟民族だから白鵬さんは時々そういうところが出る」と見解を述べていた。
池坊氏だけでなく、東京相撲記者クラブ会友の杉山邦博氏(87)も民族を引き合いに出したことがある。17年12月21日放送の「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)で、酒席で暴行事件を起こして引退した元横綱・日馬富士について「農耕民族の日本人と、狩猟民族で遊牧の民のモンゴルの人たちとでは根っこのところが違いますから」などとして、「私にはちょっと分からないですね」と述べていた。