新年早々、高校生スポーツの全国大会が相次いで開催された。成人の日だった2018年1月8日にはサッカーにラグビー、男女バレーボールの決勝が一挙に行われた。
期間が短い冬休み利用の大会では試合が過密日程となり、疑問が投げかけられた。高校野球ではセンバツから地方大会、夏の甲子園とタイブレーク制の導入が決まったが、過密問題は簡単に解消できないようだ。
休み1日だけだと「選手の動きが重く」
「高校サッカーの感動の裏で、決勝に上がった2校の日程見て驚いた。1週間で5試合」
1月8日、ツイッターにこう投稿したのは、サッカー男子日本代表の長友佑都選手だ。第96回全国高校サッカー決勝を戦った前橋育英(群馬)と流通経済大柏(千葉)の両校は1月2日に初戦、以後3日、5日、6日、8日と試合を重ねた。連戦も含む組み合わせに、「いろいろな事情はあるんだろうけど、もう少し選手ファーストで考えてほしいな。選手が潰れてからでは遅いよ」と続けた。
流経大柏の本田裕一郎監督は試合後の記者会見で、「運営最優先ではなく選手最優先で考えてほしい」と大会の過密スケジュールに苦言を呈したと報じられた。本田監督は以前から、短期間で全日程を消化する大会の運営を疑問視していた。「フットボールレフェリージャーナル」を運営するサッカージャーナリストの石井紘人氏は同監督から以前、開催時期を長期休暇が取れる夏にしてはどうかとのアイデアを耳にしたという。ただ、厳しい暑さの中で何試合もプレーするのは困難で、実現はしなかった。
石井氏の目にも、大会の日程は過密に映るが、高校生だけに短い冬休み中に終わらせなければならない事情があり、解決は容易ではないと考える。石井氏は以前、全日本大学サッカー選手権大会に出場したある大学チームに帯同した経験がある。会場は関東各地のサッカー場だったが、別の地域にあるこの大学はバスで長距離移動となった。勝ち上がるにつれて日程は厳しくなり、6日間で3試合をこなした。その時を、こう振り返る。
「休みが1日しかないと、選手の動きが重くなりました。けがもしやすくなります。強豪校と続けて対戦すると、体力的に回復しにくいとも聞きました」
大会長期化だと経費負担が増える懸念
ほかの高校スポーツの全国大会でも、状況はサッカーと似ている。第97回全国高校ラグビー大会(17年12月27日開幕)の場合、決勝でぶつかった東海大仰星と大阪桐蔭(ともに大阪)は2回戦から登場したが、12月30日から18年1月8日の10日間に5試合、ほぼ2日に1試合ペースだった。第70回全日本バレーボール高校選手権大会(春高バレー)は、男女とも1月4日に開幕し8日に決勝となった。決勝は男子が鎮西(熊本)―洛南(京都)、女子が金蘭会(大阪)―東九州龍谷(大分)の組み合わせとなったが、ノーシードだった洛南と金蘭会は5日間で6試合をこなした計算だ。特に1月6日は3回戦と準々決勝が行われ、2試合を戦い抜いた。
投手の連投が問題視されてきた高校野球では、今年の春の選抜大会からタイブレーク制が導入される。延長戦になった場合、13回から無死一、二塁の状態で攻撃が開始される。県大会、夏の甲子園大会でも導入されることになった。
いずれにしろ、過密日程問題は選手である高校生の体調を考えると、大きな負担になっているのは間違いない。ゆるやかな日程を組めれば、それに越したことはない。ただ現時点では、実現性は厳しいと前出のサッカージャーナリスト・石井氏は話す。学業優先なのはもちろんだが、大会が長期化すると別の問題が生じる。滞在費や移動費といった経費がかさむのだ。プロスポーツのようにスポンサーがついているわけではないので、保護者や卒業生の寄付が頼りになるが、大勢の部員が仮に1か月、ホテルで暮らすとなったら負担は大きい。「結局は『金持ち校』の大会になる懸念があります」と指摘する。
残る道は大会出場校を絞ることだが、これには参加校自体が反対するだろう。いまのところ、関係団体などから過密日程問題の解消へ向けての動きはみられない。