サンマだけではない「漁獲量激減」 日本周辺の海に何が?

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   食卓に欠かせない「庶民の魚」の不漁が深刻だ。2017年秋から18年初めにかけて、サンマやイカ、サケ、シラスと家庭でなじみの深い魚介類の漁獲量が減っているとの発表や報道が続いている。

   農林水産省の統計を調べると、過去10年で多くの魚種の漁獲量が減少していることが分かった。健康食として「魚食」が見直されているが、不漁が続けば小売価格が上昇し、家計の負担が増して「魚離れ」が加速しかねない。

  • 不漁は各地の「サンマまつり」にも影響
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卸売価格3割増、小売りでも値上げに

   全国さんま棒受網漁業協同組合(全さんま)は2018年1月5日、17年12月31日現在で各地の港に水揚げされたサンマのデータを発表した。一覧表では前年との比較が可能になっている。まず17年の水揚げ総計は7万7169トンで、前年の10万9590トンから3割減となった。

   漁港別で見ても、軒並み前年を下回っている。北海道花崎港では2万7237トンで前年比23%減、岩手県大船渡港では1万1088トンで同20%減、宮城県気仙沼港は9676トンで同18%減だ。岩手県宮古港は1350トンで同78%減と、影響は大きかった。気仙沼市では17年9月に予定されていたサンマまつりが中止。同時期に東京のJR目黒駅の近くで開かれたサンマまつりでは、サンマを供給する宮古市の港の水揚げが不振だったため、宮古市が北海道から取り寄せたサンマが振る舞われたという。

   単価も上昇している。「全さんま」の発表によると10キロあたり2776円で、前年比3割増となった。卸売価格の高騰は当然、小売価格に跳ね返るだろう。

   総務省が毎月発表している小売物価統計調査によると、主要都市におけるサンマ100グラムの小売価格は、最新の17年11月のデータで、東京都区部が113円、横浜107円、名古屋113円、大阪118円、福岡145円となっている。1年前の16年11月のデータを見ると、東京都区部93円、横浜85円、名古屋90円、大阪84円、福岡110円だった。いずれも値上がりしたことが分かる。

   原因のひとつに考えられるのが、サンマの回遊ルートと漁場の変化だ。2012年度の「水産白書」によると、この年、サンマ棒受網漁業の操業開始当初は漁場が北海道東部から遠く離れたロシア海域に形成され、そこの魚群の密度も薄かったため不振だったという。17年9月7日のNHK「視点・論点」でも、東京海洋大准教授の勝川俊雄氏が、ここ数年は日本周辺の海水温が高く、低温を好むサンマの回遊ルートが変わって日本から遠くなり、小型で近海でしか操業できない日本の漁船が漁場までたどり着けない点を指摘していた。

スルメイカは10年間で19万トンから7万トンに激減

   一方で外国船、特に中国や台湾がサンマを乱獲しているとの報道があるが、先述の勝川氏は、データ上影響は限定的と説明している。

   ルール違反で問題視されているのは、日本海でのイカ漁だ。日本の排他的経済水域にある「大和堆」と呼ばれる好漁場で、多数の北朝鮮漁船が不法操業していた。水産庁の17年12月8日付発表によると、水産庁や海上保安庁の対応で8月中旬からいったんはほとんど確認されなくなったが、9月中旬以降は木造船に加え鋼船も姿を現したため、厳しい措置で退去させたという。昨年11月ごろから、北海道や青森県の日本海側や秋田県に、北朝鮮のものとみられる木造船が相次いで発見されたのは、記憶に新しい。

   その影響もあるのだろうか、特にスルメイカ漁が近年大不振だ。農林水産省の漁業・養殖業生産統計によれば、2006年の漁獲量は19万317トンだったが、15年に12万9235トン、16年になると7万197トンと激減した。

   この統計を見ると、過去10年間で漁獲量を大きく落とした魚種が複数見つかる。2006年と16年を比較した場合、カツオは32万8044トンから22万7946トン、サケ類は21万8907トンから9万6360トン、ホッケは11万6391 トンから1万7393トン、カニ類が3万6591トンから2万8359トンといった具合だ。サンマも24万4586トンから11万3828トンと半減以下となった。ほかの魚でも特に16年に状況が悪化しているケースが見つかる。

   そして昨年から今年初めにかけて、サンマやイカのほかにシラス、ハタハタ、サケ、スケトウダラといった魚の不漁を報じる記事が次々に出ている。一過性のものでないとしたら、気がかりだ。

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