「漫画家のアシスタントは立場が弱く、残業代も支払われていない」「漫画家はアシスタントたちが希望や自信を持てるよう考え方を変えるべきだ」。そんな議論がネット上で白熱する中で、「ピューと吹く!ジャガー」などで知られるギャグ漫画家、うすた京介さんのツイッターが「大炎上」し、うすたさんはツイートを削除することになった。
うすたさんは、「漫画家なんてまともな仕事じゃない」から「嫌なら就職しなさい」とつぶやいた。
アシスタントの待遇を「正常化」に近付けられれば・・・
漫画家のアシスタントの残業問題は、漫画家のカクイシシュンスケさんが2018年1月7日にアップしたブログが発端だ。カクイさんは1月5日に「ヤフー!ニュース」に掲載された「ドラゴン桜」の作者・三田紀房さんのインタビュー記事を引用し、三田さんが語った内容に誤りがあるとした。
記事には、三田さんのアシスタントは残業禁止で、自由に休みを取れると書いているが、自分は11年7か月間アシスタントをした経験があり、残業は普通に行われていたとした。さらに、漫画がヒットしたところで特別ボーナスが出ることは無かった。ところが、外注しているデザイン会社にはヒットに応じたインセンティブがあった。漫画業界の中では三田さんのアシスタントに対する扱いの水準はずっとマシなほうだが、業界全体のアシスタントへの扱いについてはずっと疑問に思っていた。どうすればアシスタントがもっと働きやすくなり、希望や自信が持てるようになるのか考えた末に、
「思い切って残業代を請求することにしました。残業代の請求に関しては、この記事を読む前からずっと考えていたことです」
と宣言した。業界内ではキチンとしていることで知られる三田さんの対応によって、他の漫画家も見習い、「正常化」に近付けられればいい、という考えなのだという。
これに対し漫画家の佐藤秀峰さんは、
「どうしたらいいんでしょうね?こんな業界一回滅べばいいんだろうな」
と反応したが、うすたさんのツイートに関しては怒りを持って受け止められることになり「大炎上」し、うすたさんはそのツイートを削除した。
アシスタントにしてきたことは搾取と呼ぶ他ないのでは?
うすたさんは1月8日ツイッターで、カクイさんは何か勘違いしているようだが、漫画業界は雇う側、雇われる側関係なしに実力社会であり、プロのアシスタントとして通用する人など一握りで、そういう人たちは高い給料を得ている。
「どの職場を選ぶかも自由。そもそも漫画家なんてまともな仕事じゃないんだから嫌なら就職しなさい」
とツイートした。これがあまりにも頓珍漢な回答だとして批判がさく裂した。ツイートを削除して以降も、うすたさんのツイッターには、
「実力社会だから残業代払わないって理屈がさっぱりわからんのだが?説明してもらえる?」
「キャリアのある漫画家が労働基準法違反を推奨するような発言をしたらどれだけ漫画家を志す人に悪影響になるか想像ができないことに失望しました」
「貴方みたいな時代錯誤の古い考え方がパワハラの減らない理由だってわかりませんか?わかりませんよね?分かってたらツイ消してトンズラしないですもんねぇ」
などといった意見が寄せられている。うすたさんのこのツイートを見たカクイさんは8日、うすたさんのような考えのマンガ家は非常に多いのではないかと思っていたが、ここまではっきり言う人がいるなんて驚いた、と前書きし、
「うすた先輩、勘違いしてるのはマンガ家たちの方だと私は思います。日本のマンガ家たちがアシスタントにしてきたことは搾取と呼ぶ他ないのではないですか?」
とツイートした。