電動車のグローバル販売を2030年に現状の4倍近い550万台に――トヨタ自動車がついに電気自動車(EV)の本格展開に向け、動き始めたようだ。2017年12月18日に発表した。トヨタが10年以上先を見据えた電動車の販売目標を具体的に示すのは初めて。
これに先立ちEVなどに使う電池について、パナソニックと協業するとも発表。欧米のライバルに比べEVの開発が遅れていたトヨタだが、基幹部品である電池開発の体制を整え、一気に巻き返したい考えだ。
電池関連に計1.5兆円を投資
550万台のうち、走行中に二酸化炭素を排出しないEVと燃料電池自動車(FCV)で計100万台を目指す。ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)で残る450万台を売る。さらに2025年ごろまでに、グローバルで販売する全車種に電動専用車または電動グレード車を設け、エンジン車のみの車種はゼロとする。これらを実現するため、電池関連に計1.5兆円を投資する。
具体的には、EVは2020年以降、中国を手始めに、日本・インド・米国・欧州に順次導入。2020年代前半にはグローバルで10車種以上に拡大する計画だ。FCVは2020年代に乗用車・商用車の商品ラインアップを拡充する。得意のHVは、ハイパワー型、簡易型など多様なハイブリッドシステムを開発。PHVも2020年代に商品ラインアップを拡充する。
EVとFCVがどのくらいの比率になるかは明らかにしなかった。ただ具体的な地域と車種数に言及するなど、説明に最も力を入れたのはEV。積極的にEVにも取り組むという「本気度」を内外にアピールした格好だ。
異例のタイミングでの「両者トップ」会見
本気度はパナソニックとの協業開始を発表した記者会見でも伝わった。東京都内で2017年12月13日に開かれた記者会見に登場したのは、トヨタの豊田章男社長とパナソニックの津賀一宏社長。会見はあくまで車載用角形電池事業の「協業の可能性検討」で、具体的な決定事項はない。企業同士が提携する場合、この段階では記者会見などは行わず、もう少し骨格が固まってからオープンにするケースが多く、まして、両社のトップが顔をそろえるのは異例といえる。
それでもいち早く発表したいという思いがあったのだろう。豊田社長はあいさつで、トヨタグループ創始者の豊田佐吉が蓄電池の開発を奨励していたというエピソードを披露。2013年には静岡県湖西市の佐吉記念館を津賀社長に案内したことを明かし、「津賀社長と佐吉記念館で出会ったときから、こうなることは必然だったのではないか」と笑顔で語り、「日本で生まれ育った両者が電動化の時代をリードしていく」と力を込めた。
近年のトヨタの躍進は、エコカー抜きでは語れない。電動車の先駆けとなったHV「プリウス」を1997年に発売。2012年には「プリウスPHV」を投入し、14年には量産型FCV「MIRAI(ミライ)」を送り出した。世界で販売したこれら電動車は累計1100万台を超えている。
だが、EVというピースがないのが大きな不安材料だった。そこで手を結んだのが、車載電池世界最大手のパナソニック。不安を打ち消すのに十分な材料を手に入れたといえそうだ。