受給者そのものを減らす工夫
そもそも、生活保護を受けられる要件に該当しながら、実際に受給している人は2~3割程度と推定する専門家が多く、受給しない貧困層を含む「一般低所得世帯」の消費支出と比較する保護費の決定方式は、実態以上に保護費を下げる方向に作用すると指摘される。困窮者支援のNPOなどからは「一般家庭の生活水準が下がったから生活保護も下げるというのでは国民生活全体の水準を引き下げていくことになる」との批判も出る。
実は、5年前の改定時、社保審部会の報告書は現行の方式の限界を指摘。今回の報告書も、「一般低所得世帯との均衡のみで生活保護基準の水準を捉えていると、比較する消費水準が低下すると絶対的な水準を割ってしまう懸念があることから、これ以上下回ってはならないという水準の設定についても考える必要がある」と明記している。
厚労省も問題意識がないわけではなく、2012年、「最低生活に必要なもの」を積み上げて受給額を決める方式について専門家に試算を委託したが、夫婦と小学生の3人家族の消費額は家賃を含め月50万円近い高額になったといい、「適切な水準」の設定の難しさを逆に印象付ける結果だった。
それでも、このまま漫然と放置すれば、高齢化、格差などで生活保護受給者が増え続け、給付をカットするばかりでは、「最低限の生活」が守れないだけでなく、制度自体が崩れかねない。「深刻な病気などで就労困難な人を除き、教育や職業訓練と組み合わせて受給者そのものを減らす工夫が要る」(日経新聞12月21日社説)のはもちろんだが、そうしたことを含め、「(生活保護制度を)持続させるための方策を真正面から議論する段階にある」(朝日新聞16日社説)のは間違いない。