実際に「最低限の生活」にいくら必要なのか
なお、母子加算は月平均で2万1000円から1万7000円に引き下げ、総額で約20億円(平均19%)削減。児童養育加算は、対象の上限年齢を15歳から18歳まで引き上げる一方で、3歳未満については1万5000円から1万円に減額する。これらによる扶助費のカットの総額は最終的に年間160億円(1.8%)になる。
これらを総合して受給者への影響を見ると、生活扶助額は、受給世帯の67%で減、8%は変わらず、26%は増える見込み。子どものいる世帯では57%が増え、43%が減る。世帯類型ごとにみると、40代夫婦と子ども2人世帯▽子ども2人の40代母子世帯▽50代単身世帯▽65歳の高齢単身世帯▽75歳の高齢単身世帯などで最大5%減となる。一方、町村部などの子ども1人の母子世帯では13.4%増える――などだ。
生活保護は、憲法25条が保証する「生存権」、つまり、全国民が健康で文化的な最低限の生活を送れるよう保障する制度だ。とはいえ、一般低所得世帯の消費支出より生活保護基準が相対的に高いから下げるというのは、心情的には当然にも思える。さらに、不正受給が絶えない現実が反発を招く面もあるほか、自助努力が足りないとの偏見も根強い。また、実際に「最低限の生活」にいくら必要かという算出が難しいのも確かだ。
現行は、受給者の生活水準が経済の成長に追いつくようにする目的だったが、低成長、デフレ時代、とりわけ、格差や貧困などが広がる中では受給額を低くする方向に働く。
今回の改定についての政府の公式の説明は、「消費の実態と現行の扶助費の水準にばらつきがあって是正をした」(加藤勝信厚労相)というもので、引き下げありきではないと強調する。前回(5年前)は「デフレ(物価下落)を反映した引き下げ」(加藤厚労相)で、今回はこれとは違うという説明だ。だが、安倍晋三政権はデフレから脱却しつつあると自賛するが、「一般の低所得世帯の消費支出に合わせて生活保護も下げるという今回の改定は、安倍政権の期間とそっくり重なるこの5年で、一般世帯の生活が悪化したことを意味し、アベノミクスの看板に偽りありということになる」(全国紙社会部デスク)。