2018年産から国によるコメの生産調整(減反)が廃止されることを受けてか、コメの輸出が増えている。
日本産のコメの主力輸出先は、輸出数量・金額とも香港がトップ。シンガポール、米国がこれに続いている(2017年1~10月時点、財務省貿易統計)。
最近5年で4.7倍増
コメの輸出は、最近の5年で4.7倍も増えている。2011年に、輸出数量が2129トン、金額で6億8300万円だったが、16年には数量で9986トンと1万トンに迫り、金額も27億900万円と、右肩上がりで伸びている。
香港やシンガポール、米国のほか、中国やオーストラリア、タイ、英国、ベトナム、モンゴル、マレーシア、インドネシア、カナダやオランダなどにも輸出している。
さらに、農林水産省の「農水産輸出入情報」(17年12月8日発表)によると、同年1~10月の累計で1万6814トン(前年同期比23.2%増)、28億8752万円(22.0%増)と、すでに前年実績を上回っている(政府による食糧援助分を除く)。
このうち、主力の香港には数量で3250トン、金額で8億97万円を輸出。シンガポールには2303トン、5億1001万円、米国には798トン、2億5603万円を輸出している。
コメの輸出が増えている背景のひとつには、「日本食・食文化」がユネスコ無形文化遺産(世界遺産)に登録され、日本食ブーム」が沸き起こっていることが、コメの輸出を後押ししている。
農水省によると、2009年に340兆円をされる世界の食(加工と外食の合算)の市場規模は、2020年には680兆円に倍増する(ATカーニーが試算)とみている。また、ジェトロは海外での日本食への支持が「食」の輸出に結びついていないと指摘。輸出の重点品目として、味噌や醤油、レトルトフーズなどの加工食品や日本酒とともに、コメをあげ、欧州やロシアなどへの輸出を強めるべきという。
ブランド米は価格高騰
その一方で、コメの国内消費量は年々減少。コメの1に当たりの年間消費量は、ピークの1962年に118キログラムを消費していたが、2014年にはその半分の55キログラムに減った(農水省「米をめぐる状況について」2016年6月)。コメの全国ベースの需要量は、毎年8万トンずつの減少傾向にある、としている。
そうした中で、2018年産米から国による「減反」が廃止されるが、コメ農家が急激に生産量を増やしたり、減らしたりするようなことはないようだ。2018年1月5日付の河北新報は、「『減反廃止』18年産米、東北模様眺め『目安』手堅く設定」の見出しで、東北6県が示した目安は、2017年産の目標と比べて微増か横ばい、あるいは微減で、「模様眺めの様相が強まった」と報じた。「東北全体の作柄が『平年並み』だった17年産の実績と比べると、数量は約3万7000トン、作付面積は約7800ヘクタール増える計算になる」という。
国内の減少を、海外への輸出増に活路を見出そうという思惑があるようだ。
国内では、いわゆる「ブランド米」の競争も激化。2017年10月11日には、新潟県の「新之助」が首都圏での本格販売を開始し、小売店のほか、百貨店や高級スーパーの棚に並んだ。
近年、新潟県や宮城県、秋田県といった「米どころ」といわれる地方以外の地域でも、自治体の旗振りで「ブランド米」の研究・開発に力を注いでいる。農水省に登録のあるコメは全国で753種類。ブランド米が続々登場するなか、懸念されているのが価格の高騰だ。
2017年9月以降に登場した新銘柄、前出の「新之助」や福井県の「いちほまれ」、岩手県の「金色の風」などは、5キロ3000円台で販売されている。最高級ブランドとされる「新潟県魚沼産コシヒカリ」と、そん色ない価格だ。
国内コメ消費への影響が気になるが、海外への輸出についても、東南アジアなどの価格の安い「海外米」との競争力でも見劣りするとの懸念もくすぶっている。