楽天市場「限界」説への挑戦 ビックカメラと提携の狙い

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   ビックカメラと楽天が、提携して家電の通販サイト「楽天ビック」を2018年4月に設ける。開設に先立ち、サイトを運営する共同出資会社を設立する。社名や出資比率は今後詰める。17年12月19日、発表した。家電量販店はアマゾンのようなネット通販に顧客を奪われ続けている。そのためネット事業を強化するのは当然だが、リアル店舗への来店を促す狙いもある。

   ビックカメラは現在、自社独自のサイト「ビックカメラ・ドットコム」を持っており、インターネット上の仮想商店街「楽天市場」内にも販売サイトがある。2018年4月以降、この楽天市場内のサイトが「楽天ビック」に衣替えし、「ビックカメラ・ドットコム」は存続する。「楽天ビック」にリニューアルするにあたり、まず利用者の利便性を高める。

  • 楽天とビックカメラ、連携の狙いは…(画像はビックカメラ楽天市場店のサイトから)
    楽天とビックカメラ、連携の狙いは…(画像はビックカメラ楽天市場店のサイトから)
  • 楽天とビックカメラ、連携の狙いは…(画像はビックカメラ楽天市場店のサイトから)

リアル店舗への来店を期待

   これまでは自宅に家電を据え付けたり配線したりする工事を申し込む際、商品の購入とは別に「セッティング券」と称するものを買う必要があり、手間がかかった。これをビックカメラ・ドットコムと同様に一括して商品購入と設置申し込みができるようにし、利用者の負担を軽減する。東京23区内では、注文した当日の配送にも対応する方向で調整する。

   リアル店舗への来店を期待する方策として検討中なのは、楽天ビックで注文した商品をビックカメラの店頭で受け取れるようにすること。また、ビックカメラの店頭で「楽天スーパーポイント」をためたり使えたりするようにもする。さらに、楽天ビック上において、消費者が欲しい家電の在庫がビックカメラのどの店舗にあるかを検索できるようにする方針だ。

   家電製品は食品などと違って製品の質は均一のため、書籍などと同様にネット通販に向いている分野だ。それだけにリアル店舗の分が悪い面もある。実際、経済産業省の調査によると、2016年時点で家電販売に占めるネット通販の比率は3割程度に上る。一方で、ビックカメラ自身は17年8月期において電子商取引(EC)売上高は729億円とグループ全体の9%強にとどまる。家電量販業界では最短2時間半で商品を届けるサービスを展開するヨドバシカメラがネット販売の先頭ランナーと言えるが、これを追いかけるビックカメラとしても、電子商取引の販路を拡大することが生き残りには欠かせない。そのことも楽天との提携を後押しした。ビックカメラは「ビックカメラ・ドットコム」において2017年12月中旬、インターネットとの親和性の高い仮想通貨ビットコインによる決済への対応も始めており、ネット対応の強化の手を緩めない。

携帯電話キャリアへの参入を表明

   ネット通販を利用する消費者の間では、冷蔵庫や洗濯機のような大型で高価な家電製品は、買う前にリアル店舗で実際に見てみたいという声も多い。ビックカメラとしては、そうした人々を「楽天経済圏」からリアル店舗に引き寄せることも期待している。

   ただ、ビックカメラはヤフーが運営する「ヤフーショッピング」でも販売サイトを運営している。「楽天経済圏」への依存度を強めることがその他のネット企業との連携を弱める可能性はないか、と危惧する声も聞かれる。

   一方、楽天としては、ネットの普及に伴って皮肉にも「グーグルなどで検索すれば店のサイトがヒットするので手数料を払って楽天の商店街に出店する必要はない」との出店者の声が広がりつつあり、楽天市場の限界説がこのところ改めて聞かれている。そうした逆風のなかで「祖業」である楽天市場は今も主力事業として強化が不可欠。ビックカメラとの提携もその一環だ。

   楽天は2017年12月に携帯電話キャリアへの参入を表明したが、「兆円単位の設備投資に耐えられるのか」などと懐疑的な見方も根強く、参入発表後の株価は伸び悩んでいる。リアル店舗を含めた楽天経済圏の拡大につながるビックカメラとの提携は意味があると考えているようだ。

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