銀行はグーグルに取って代わられる? 江上剛氏に聞く【どうなる2018年<7>】

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もっと掘り起こせ! 企業の資金ニーズはある

   ――企業は内部留保を蓄えていますし、銀行の企業向け融資が伸び悩んでいます。企業の資金ニーズは本当にないのでしょうか?

江上「資金ニーズがなくなることはありません。もっと掘り起こせばいいんです。最近はソーシャルレンディングやクラウドファンディングの市場も1000億円市場に伸びていますよね。それを考えても、資金ニーズがないなんていうことはないし、スタートアップしたい人、企業はたくさんあります。
それどころか、銀行はベンチャー企業が資金を借りるとしても、『借入れ金額が小さい』『信用がない』と、理由をつけては融資を断るんです。最初からピカピカな企業なんて、どこを探してもありませんよ。そんなことだから、銀行は見放されるんです。ビジネスでも、生活でも、銀行がなくなってもなんら支障がなくなっているのに、銀行はそれに気づいていないんです」

   ――国内、地域金融の担い手である地方銀行も、マイナス金利の影響で疲弊しています。

江上「企業融資が伸びていないうえ、余資(資金)運用も利益が出にくくなっています。株式運用の比率を高めるなど、なんとか遣り繰りしているのが現状でしょう。
ただ、メガバンクに比べれば、やり方ひとつでまだまだやれますよ。たとえば、鹿児島銀行は農業や酪農に活路を見出しました。これまでは農作物の加工品にはお金を貸してきましたが、銀行員が酪農家に出向き、じかに牛に携わることでその良し悪しまで理解できるようになった。いわゆる目利きができるようになり、それが融資につながった。
これまでは机上のうえで考えてきたから、どこまで信用していいものか踏み込めなかった。借りる側も、銀行員が自分たちのことを理解していないのに、上から目線で偉そうに言うことに苛立っていた。本当にわかろうとする、その姿勢が必要だったんです。お客様のために、を考えれば、やるべきことはあるはずです」

   ――銀行界は厳しい経営環境にあるようですが、2018年はどうなるのでしょう?

江上「文字どおり、試練の年ですね。なにしろ、お客様が『銀行なんて、いらない』って言いはじめているんですから。これまで銀行は、自分たちが生き残るために、貸しはがし、貸し渋り、なんでもやってきた。企業は銀行があってのものと、思っているんです。それが間違いだということを、しっかり自覚しないとダメでしょうね。2018年はそういったツケが回ってくる年だと思います。
もう一度、本業である為替、預金、融資を考え直し、利益ありきの経営体質を改善しないと、本当に見放されるでしょうね。グーグルが銀行にとって代わる時代が迫って来ています」

   江上 剛(えがみ・ごう)プロフィール

作家。1954年兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。同行築地支店長などを務める。2002年『非情銀行』で作家としてデビュー。03年に銀行を退職。『不当買収』『企業戦士』『小説 金融庁』など経済小説を数多く発表する一方で、『会社という病』(講談社+α新書)などのビジネス書も手がける。近著に『病巣 ~巨大元気産業が消滅する日』(朝日新聞出版)、『クロカネの道 ~鉄道の父・井上勝』(PHP研究所)がある。


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