銀行はグーグルに取って代わられる? 江上剛氏に聞く【どうなる2018年<7>】

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   1990年代後半の金融危機、2008年のリーマンショックを乗り越えてきたメガバンクや地方銀行がいま再び、試練を迎えている。経営の足を引っ張る、一番の要因は日本銀行のマイナス金利政策。運用収益が上がらないうえ、伸ばさなくてはならない企業融資はさっぱり。稼ぎ頭のカードローンやアパートローンは「行き過ぎ」でブレーキをかけざるを得なくなった。元気を取り戻したかにみえる銀行界だが、なにやら雲行きが怪しくなってきた。

   作家で、元メガバンクで支店長などを歴任した江上剛氏に、2018年の銀行界を占ってもらった。

  • 「グーグルが銀行に代わる時代がやって来る」と話す、江上剛氏
    「グーグルが銀行に代わる時代がやって来る」と話す、江上剛氏
  • 「グーグルが銀行に代わる時代がやって来る」と話す、江上剛氏

メガバンクは日本を見捨てた?

   ――日銀がマイナス金利政策を導入して5年。2017年の銀行界は、その影響が表面化してきました。銀行の現状を、どのように見ていますか。

江上「確かに、マイナス金利はだいぶ効いてきていますね。なかでも、国内、地域の特化している地方銀行などは企業融資が伸ばせないうえ、融資できたとしても貸出金利ザヤが稼げず、収益が悪化しています。その一方でメガバンクは、たとえば三菱UFJ(フィナンシャル・グループ)などの海外向け利益が4割にのぼるといいます。メガバンクは海外に収益源を求めるようになっていて、国内向けは店舗の統廃合や人員削減策を打ち出すなど、厳しい状況になったなと感じています」

   ――メガバンクは、日本を見捨てたと?

江上「そう思われても仕方がないですよね。でも、メガバンクも必死ですし、変わってきてはいます。たとえば、海外事業です。日本に収益機会がなくなったからといった発想で、海外へ進出しているわけではなく、最近は現地の銀行になろうとしています。
従来であれば、海外に進出した日本企業の現地での事業がうまく回るよう、資金面を含め支援してきたのですが、それが地元の現地企業への融資で得た利益を、現地に還元するという発想になった。だから、現地企業を相手にビジネスを展開できるよう、現地の金融機関を買収するケースが増えています。海外事業に、本気で取り組もうという表れです。
一方、少子高齢化にみられるように、国内だけで収益を上げていくのが難しくなっていることは事実です。ですから、国内事業を効率化しようということは理解できないことはありません。ただ、やるべきことをやり尽くしたかといえば、そうではありませんね」

   ――どういうことでしょう?

江上「銀行業務は為替、預金、融資の3つが柱です。企業に資金を回すことで、社会インフラとしての役割を果たしているんだという自負がありました。勤めている銀行員も、『社会のため』という意識が強かった。とはいえ、漫然とそれに甘んじてきたことも事実です。簡単に言えば、なにもやってこなかったんですよ。
金融危機があって、生き残りのためにメガバンクができることはあった。でも、不良債権は処理したけれど、お客のためになにかをやったわけではない。そもそも、メガバンクはリテールなんて少しもやってこなかったんです。それは、わたしが支店長の時代からでしたよ。
たとえば公共料金は、今なら銀行に行かずとも、コンビニで支払えます。それどころか、銀行員がいる店舗を減らして、ATMですらセブン銀行のようなコンビニに任せようなんてことになっています。
つまり、銀行が追求してきた利便性、効率性は銀行のためであって、お客様のためではない。逆に、流通業などは『お客様のために』が企業風土として染み着いているので、お客のためになれば、貪欲に、積極的に取り入れていきます。だから、銀行の本業である為替(振込業務)がコンビニで、できるようになったんです。
海外送金だって、もはやビットコインのような仮想通貨や電子マネーにとって代わる時代ですよ。お客に背を向けたままでは、銀行がグーグルにとって代わられる日もそう遠くありませんよね」

   ――銀行員はどう思っているのでしょうか。

江上「現場の銀行員も不満を募らせています。なかでも若手は、『お客様の、企業の、社会の役に立ちたい』と思う、入行時の気持ちが強いですからね。それなのに、実際にやらされる仕事は、投資信託を売ったり保険商品を売ったりして手数料収入を稼ぐことばかり。そういったことに嫌気がさしています。働くことへのモチベーションなど上がりません。これは最悪ですよ」
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