工場の新製造棟めぐり「兵糧攻め」
さらに、東芝の対抗策もWDを追い詰めた。東芝が四日市工場などに建設する新製造棟について、従来のWDとの共同投資から単独投資に切り替えるとの方針をWDに通告。四日市工場はWDにとってメモリー製品の唯一の調達先であり、製品調達を絶たれるとビジネスが立ちゆかなくなる。この「兵糧攻め」に、強気のWDも譲歩を余儀なくされた。こうして、「包囲網」を敷かれたWDは、東芝の求めに応じて和解に応じるしかなかった。
ただ、東芝は今回の「奇策」により、新たなリスクを抱えることになった。増資に応じたファンドは、企業に厳しい要求を突きつける「モノ言う投資家」も数多く含まれる。その中には、「債務超過を回避できたのだから、稼ぎ頭の東芝メモリはもう売却する必要はない」と主張するファンドもあるという。WDとの対立を解消した代わりに、東芝は新たに株主となった多くのファンドと渡り合わなければならない。市場関係者は、それを東芝の経営リスクとして意識し始めている。