年明け以降は、次期総裁選びが本格化
こうした中で12月21日、政策変更がなかった金融政策決定会合を終えて記者会見に臨んだ黒田総裁の発言が注目された。景気が良いのは世界共通で、ここへきて米FRBに続いて欧州中央銀行(ECB)も緩和縮小を進めているからだ。リーマン・ショック以来の危機モードからの完全撤退でもある。しかし黒田総裁は「景気がいいからそろそろ金利を上げるとの考えはない」と述べ、2013年春の就任以来の2%の物価目標にこだわり、それに向かって現在の大規模な金融緩和策を維持していく考えを強調した。
黒田総裁の記者会見に注目が集まったのは、黒田総裁が11月のスイスでの講演で「金融緩和の副作用が金融機関の経営に悪影響を与え、ひいては金融仲介機能を低下させて緩和の効果を減じさせかねない」と指摘したからだ。聞きようによっては副作用のデメリットが大きいことを理由に緩和縮小にかじをきる布石とも聞こえるからだ。しかし、決定会合後の記者会見で「(講演は)学術的な分析をとりあげたもので、(金融政策の)見直しが必要だとは思っていない」などと述べ、「火消し」に専念した。スイスでの発言は今、日銀ウォッチャーの間で、緩和縮小ではなくむしろ「追加緩和が必要」と主張する日銀の片岡剛士審議委員へのけん制とみられており、実際そんなところかもしれない。
年明け以降は、次期総裁選びが本格化し、政策変更どころではなくなるだろう。そうした中で有力視されているのが黒田総裁の再任だ。現在73歳という年齢を気にする向きもあるが、今や高齢者が健康かどうかは年齢差より個人差という面もある。黒田氏自身はいたって元気だ。何より任命権者である安倍晋三首相が再任に前向きと伝えられている。
再任を視野に入れると、「2%物価目標」は、黒田総裁が就任以来掲げているだけでなく、日銀と政府の共同声明にも盛り込まれており、取り下げることは考えにくい。取り下げて円高にでも見舞われれば元も子もない、ということもあろう。一方で、金融緩和を進めるための国債の買い入れ量にもいずれ限界がくる。そこで、あくまでも長期戦の2%物価目標への政策を掲げつつ、いかに「出口」を探るかが、黒田再任後の日銀の大きな課題で、相当な際どく、狭い道となりそうだ。