「若いお相撲さんとか親方衆とかみんな、ファンがいますんで。とにかく、相撲の発展につながるような動きをしてほしいです。たくさんのたくさんのファンがあっての相撲なんで。今年こそ前に進むしかないんで、精一杯頑張ってほしいです。ファンが喜ぶ相撲をドンドン取ってほしいですね」
8番勝負を終えた元横綱・朝青龍、ドルゴルスレン・ダグワドルジ氏は、「現在の相撲界に一言」を求められ、こう熱弁した。2017年12月31日、AbemaTVで放映された「朝青龍を押し出したら1000万円」のクライマックスである。
8人の挑戦者に完全勝利
「張り手なし」「立会時の変化なし」「カチアゲなし」といった独自のルールで、朝青龍に勝てれば1000万円。ひと癖もふた癖もある一般挑戦者に加え、有名格闘家などもVIPとして参戦。7年のブランク、8戦連続というハンディキャップ。番組による事前街頭アンケートで、「全勝」を予想した人はわずかに7.5%に過ぎなかったのも、当然といえば当然の厳しい条件だ。
しかし、「朝青龍」は強かった。
第1戦は、元フランス外国人部隊の経歴を持ち、入れ墨だらけの鋼のような筋肉を持つ久保昌弘さんだ。殺気をほとばしらせて挑みかかった久保さんだが、朝青龍は文字通り子ども扱い、一瞬にして背中から土俵に叩きつけていた。
第2戦、京大卒の「インテリファイター」徳原靖也さんも、頭脳戦に持ち込む余地すら作れず。アテネ五輪柔道銀メダリスト・泉浩さんも、必殺の足技を仕掛けるが、朝青龍はびくともしない。ブラジリアン柔術世界一の経歴を持つ身長2メートル超の巨漢、リダ・ハイサム・アイザックさんはその長いリーチで押し出しを図るが、即座に懐に入られる。アイザックさんの指が左目に入りかかったためか、土俵から叩き出す際の朝青龍の表情は、現役時代さながらの鬼気迫るものだった。
第5戦の覆面レスラー、スーパー・ササダンゴ・マシンは、事前に朝青龍対策を「プレゼン」するという異色の登場で、本人を苦笑させるものの、取り組みでは長期戦に持ち込むなど健闘を見せた。とはいえ、朝青龍は余裕たっぷり、マスクを取り上げての勝利を収める。続くアメフト日本代表・清家拓也さんは、本職仕込みの強烈なタックルを見せるが、あっさりいなされ、後は手も足も出ず。ご存じボブ・サップさんも自信たっぷりに組みつくが、まわしを取られてあっさり転がされた。