岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
エルサレム首都認定にユダヤ教徒が見る「歴史」

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   トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定すると宣言し、大使館の移転を決定したことに対して、アメリカに住むユダヤ人のなかにも賛否両論あると、前回(2017年12月24日付)、紹介した。

   トランプ氏の今回の発言の背景には、支持基盤であるキリスト教徒福音派(evangelicals)やユダヤ人に対して選挙公約を果たし、支持をつなぎとめたいという思惑があるようだ。

   私がそう話すと、前回登場した正統派ユダヤ教徒のデビー(55)は、「これにはもっと大きな理由があると思う」と言い、プリム(Purim)というユダヤ教の祝日について話し始めた。

  • 米ニューヨークのマンハッタンでも、正統派ユダヤ教徒をよく見かける
    米ニューヨークのマンハッタンでも、正統派ユダヤ教徒をよく見かける
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娘イヴァンカと古代ペルシャのエステル

   ペルシャ王クセルクセス1世(在位:紀元前486年-紀元前465年)は、若く美しいユダヤ人のエステルを王妃として迎えた。エステルがユダヤ人であることを王は知らなかった。彼女は両親を亡くしたため、モルデカイという親戚に育てられた。

   ある日、モルデカイが敬礼を拒否したことに怒った大臣ハマンは、ユダヤ人絶滅を企てる。それを知ったエステルは、自分がユダヤ人であることを命がけで王に告白してとりなしをし、ユダヤ人を絶滅から救い、逆に大臣を処刑に追い込んだ。この故事にちなんだ祝いが、プリムである。

   私はデビーの家族や親戚と、プリムを一緒に祝ったことが何度かある。この日、彼らはハロウィーンのように仮装し、飲み食いし、踊り、酔いつぶれ、大騒ぎする。正統派ユダヤ教徒の彼らは、伝統と宗教を頑なに守り続けている。

   デビーは言う。

「ユダヤ人のエステルがなぜ、ペルシャ王と結婚しなければならなかったか。ユダヤ人の誰も理解できなかった。今、アメリカで私たちの目の前で起きていることは、これとまったく同じ。トランプが寵愛する娘のイヴァンカがジャレッド・クシュナーと出会い、結婚し、正統派ユダヤ教徒になり、今、イスラエルでこういうことになっている。
そもそも、過激で無礼で、トランプのようなとんでもない男が大統領になるなんて、ほとんどの人が想像していなかった。これはすべて、『神の手』によってなされていること。神が操っているとしか考えられない。人を脅して自分流に物事を突き進めてしまうトランプのような男を使って、行き詰った中東に揺さぶりをかけ、現状を打破しようとしているのではないかしら。イヴァンカが正統派ユダヤ教徒だなんて。『神の手』以外に説明のしようがないわ」
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