「限定的軍事行動」がエスカレートする可能性
――では、衝突の可能性はまったくないのでしょうか。
武貞 国際政治では「可能性ゼロ」はありません。北朝鮮がミサイルの試験発射を行うとき、人的被害が起きないと判断する米国が迎撃することはあり得ます。ミサイル迎撃を北朝鮮は「侵略とみなす」と表明しているので、米国の誤算になるのですが、北朝鮮が軍事力行使を決断し、限定的な攻撃を韓国の離島にある軍事施設に加えたりする可能性はあります。2010年に起きた哨戒艦「天安」撃沈事件や延坪島砲撃事件のケースです。双方が「限定的」だと思っている間に事態がエスカレートする可能性はあります。この可能性は7年前よりも今の方が高く、最初に軍事力行使をする可能性はトランプ大統領の方が高いでしょう。このリスクが1%はあるとみています。
――すでに北朝鮮は核兵器を完成させ、「抑止力」を持っているのでしょうか。
武貞 まだそこまではいっていないとみています。「火星15」が53分間、4475キロの高度まで飛行したのは確かですが、最後は3つぐらいに分かれて、日本の排他的経済水域(EEZ)に落ちた。これは再突入した時に衝撃や熱に耐えられなかった可能性を示しています。核兵器は落ちるときに核爆発しますが、現時点では弾頭の体をなしておらず、まだ完成していないとみていいでしょう。ただ、北はさらに実験を続けて、米東海岸まで届いて核爆発が起こせるレベルの技術を身に着けたいと考えています。