2017年~2018年の冬、中国のガス不足はどの程度、深刻なのか?
17年10月末、北京では例年のようなメディアに対する気象協議会の発表は行われなかった。気象協議会は毎年、北京市熱供給管理事務所、気象局と大規模熱供給機関、燃料部門がドッキングして暖房開始時間を討論し、寒ければ早めに暖房を供給し、寒くなければ暖房開始を遅らせる。近年は、ガス供給管理事務所と中国石油公司(CNPC)が討論の真の主役になっている。
全中国の5分の1のガスを消費する都市
なぜ今年は気象協議会のニュースが報じられなかったのか?はっきりしているのは、「暖房を早めに開始することはできるのか、ガスは足りるのか」ということだ。
中国の燃料用のガスの絶対的多数は、天然ガスである。
北京で必要なガス用量は、17年、急増した。どの程度なのか、やや誇張して言うと、16年の北京の暖房供給面積は8.1億平方メートルであったが、そのうち88%がガスによる暖房で、全暖房供給期間(毎年11月15日~翌年3月15日)で約120億立方メートルのガスを燃やし、毎日1億立方メートル前後のガスを消費した。それが17年には、北京の暖房供給面積は8.4億平方メートルに増え、さらにガスによる暖房面積が97%という驚くべき比率に達した。
そのため、北京市熱供給管理事務所が対外的に発表した時点で、すでに暖房供給期間中のガスの消費予測は慎重にならざるを得ない項目になっていた。
理由は簡単で、北京のガスで支える暖房供給面積が8億平方メートルを超え、ガスの消費量が爆発的に増加したからだ。
国家統計局のデータによると、2015年1年間の全国平均1日当たりの天然ガス消費量は5.3億立方メートルで、北京だけで5分の1を消費する計算になる。
ロシアのパイプラインでも間に合わない
天然ガスについては、中ロ両国首脳が幾度となく意見を交換し、驚くべき大型契約を交わした。ただ、中ロ天然ガスパイプラインに、いったいどれほどのガス輸送能力があるのだろうか。
契約によると、2018年から、ロシアは中ロ天然ガスパイプラインの東ルートによって中国に天然ガスを供給し始めるが、輸送量は年々増加するとされ、最終的には毎年380億立方メートルに達し、累計契約期間30年で、契約総額は4000億ドルに上る。
ただ、これはまだ執行されていない。実際のいまのところ、ピークに達したところで、毎日送られてくるガスはかろうじて北京一都市の暖房供給に間に合う程度だ。
一方、中国が自ら行っている「西気東輸(西部地区のガスを東部地区に輸送する)」の中の寧夏回族自治区の中衛から陝西省の靖辺までの中靖連絡線は、17年11月27日から営業を始めたばかりだ。1日当たりの設計輸送量は1億立方メートルに達しておらず、単独では北京の暖房供給の必要量に応じきれないのは間違いない。
誇張なしに、ガス消費量の面で、北京は超弩級の「吸血鬼」あるいは底なし沼である。CNPCはありったけの力を振り絞って、なんとか北京の需要に間に合わせるのがやっとで、天津あるいはいわゆる「環渤海経済圏」に対しては無力だ。
「脱石炭」転換の大きなハードル
2017年の冬、中国―は「石炭から天然ガスに転換」、「近いうちに、北京に青空が戻る」というスローガンを、より早く貫徹するために、北京の各級政府が最終的に集計したガス供給量は暖房期間に必要な量をはるかに上回るだろう。
実は、暖房用ガスの大躍進だけでなく、今年、北京は神業のように火力発電所を全部閉鎖しており、現在、現地発電はほとんどをガスに頼っているのだ。
しかし、深刻な「ガス恐慌」が起きた時、中央政府はCNPCに一切の代価を惜しまず、北京にガスを供給するようにさせるだろうが、河北省はや北方の他の省については誰もが「われ関せず」である。
暖房で田舎によくあるのは、低層の人々が粉炭を燃やすことだが、これが冬期のスモッグ発生の主要な原因である(もちろん、これだけではないが)。「石炭からガスへ」「石炭から電気へ」転換するのは、北方の大気汚染問題を解決するためには避けて通ることのできない一本の道である。
しかし、4億トンに上る都市部、農村部の冬期暖房用の石炭を全部天然ガスに換えるとすれば、中国の天然ガスの年間消費量の倍に相当する。また、天然ガスには輸送、貯蔵の限界と、冬季暖房用と言う季節性があり、さらに供給を短時間で増やさなければならない。倍とは言わぬまでも、10%増やすことでさえきわめて大きな試練である。あらかじめパイプライン、備蓄ステーション、サービスステーション、ガス源を整備したうえで、ようやく末端の消費者を普及させることができる。これには時間が必要で、ゆっくりと進めるしかない。
中国が今冬のような深刻な「ガス恐慌」と寒い冬に見舞われていることは、完全に政府の政策決定と執行の問題である。
(在北京ジャーナリスト 陳言)