「未納料金を滞納しております。ご連絡なき場合は法的手続に移ります。ヤフー」。これは、ニセの請求だ。消費者庁は2017年12月22日、ヤフーと偽ってこうした文面をSMS(ショートメッセージ)で送りつけ、金銭を支払わせようとする悪質な手法を公開した。
同庁では1年前にも、ヤフーの名をかたるSMSの架空請求について注意喚起を出している。いまだに続いているだましの手口に気を付けたい。
ある被害者はクレカまで渡してしまい...
消費者庁が公表した最近の事例によると、SMSで送られてきた架空請求には電話番号が書かれている。「法的手続」とのメッセージに驚いてそこに電話をしてきた人に対して、電話口からは、ヤフーのサービス利用で数万円滞納していることが告げられ、「支払方法はお近くのコンビニエンスストアでギフトカードを買って、そのギフト券番号を教えてください」と求められる。
SMSの「ヤフーをかたる事業者」は、ヤフー、ヤフーサポートセンター、ヤフージャパン、ヤフーカスタマーセンターといった名称を使い分けている。不安をあおって電話をかけさせ、詳しい個人情報を聞き出した後に口から出まかせを言って金銭を請求し、支払わせる――詐欺の手口としては古典的とも思える。一度だまされると、その業者の関係者と思われる別の事業者から電話がかかってきて、「ほかにも未納料金がある」旨のウソの請求を次々と突き付け、お金を巻き上げようとする。SMSはメールと違って、電話番号さえ分かれば相手にメッセージを送信できる。無作為に多数の番号あてにSMSを発信しているのだろう。
ツイッターには、SMSの架空請求を受け取ったという投稿が、実際のSMSの画像と共に複数見られる。消費者庁の紹介事例どおりだ。こうしてニセ請求を公開している人たちは詐欺の手口を見抜き、広く注意喚起をしている。電話番号を検索したら詐欺メールとの情報があった、と書いている人もいた。
消費者庁消費者政策課財産被害対策室に電話取材すると、22日の記者会見内容を基に詳細を話してくれた。最も被害が大きかったのは40代女性で、1900万円に上る。一度架空請求に応じたのち、別の悪徳業者にもだまされ、最後は弁護士を称する男から「ほかにも未払いがある。このままでは財産をすべて押さえられてしまうので、財産保全を裁判所に申請する」などとウソを言われ、キャッシュカードやクレジットカードまで渡してしまった。
今年の春先から初夏にかけて相談件数が急増
消費者庁による今回の注意喚起からちょうど1年前、2016年12月22日にも同庁から、ヤフーをかたる事業者による架空請求詐欺とその手口について公表されていた。犯罪集団は自分たちを「ヤフー総合窓口」「ヤフー総合受付」と称したり、ヤフーを「Yahoo」とアルファベット表記したりして、だましのメッセージを送りつけてくる。SMSで相手の不安をあおって電話させ、受話器の向こうからあれこれとウソを言って最終的に金銭を支払わせるのは、今回と同じだ。
1年前も今回も、もちろんヤフーは一切関係がない。そもそもヤフーがSMSで料金未納者に連絡することはなく、支払方法としてギフト券を買わせることもあり得ないという。
同庁財産被害対策室は取材に対し、1年前に注意喚起を出した後、2017年1月~2月にかけては相談件数が減少し効果が見られたが、春先から初夏にかけて急増し、秋になっても増えたと説明した。しかもだまされて金銭を支払った件数も昨年比で大幅増となったため、今回改めて消費者への注意を呼びかけたという。なぜ「ヤフー」の名をかたる詐欺が多いのか、はっきりした理由は分からない。インターネット上では知名度や信頼性が高いからかもしれない。
だまされないための対策として消費者庁は、ヤフーがSMSで未納料金支払いを要求することはない点を指摘し、また「本日中に連絡がなければ法的手続きに移行します」との脅しや「ギフト券を購入してその番号を連絡しろ」というのは「詐欺の手口」なので、絶対に応じず無視するようにアドバイスする。姑息な事業者は、一度請求に応じた相手から何度もだまし取ろうとしてさらに架空請求を押しつけてくるおそれがある。SMS上の電話番号にダイヤルしたり、根拠のない支払いに応じたりしては断じてならない。また「不安な場合は、消費生活センター、警察、家族でも支払う前に相談してください」とも呼びかけている。