加計問題の不毛な議論の遠因、朝日・NHKスクープ合戦の不幸な生い立ち

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NHKのニュースが出てしまったため

   だが、このニュースは朝日を慌てさせるには十分だった。

   2か月前には、一連の文書を入手していたと言われる朝日は、急きょ14版に向けて記事を作成して突っ込んだようだ。NHKが曖昧ながらも先んじて放送したのだから、朝日としても追いかけなければならない。23時に放送されているから、締め切りの最も遅い14版に間に合わせるために、文書の概略を示しただけの記事になってしまった。

   NHKが、いつこれらの文書を入手したのかはわからないが、23時のニュースで流した「内閣府審議官との打ち合わせ概要」の文書には、開催された日時や出席者した内閣府や文科省の官僚名も示されている点では、朝日のものより信憑性が高い。これも後にわかるのだが、NHKはすでにこのとき、国家戦略特区の選考過程は「加計ありきだった」と、後に疑問を呈する前川喜平・前文科事務次官のインタビューの撮影も済ませていたという。もし、これらを朝日がスクープを放つ前日のニュースで放送していたとしたら、完全にNHKのスクープになっていたはずだ。

   朝日とNHKの特ダネ競争はまた、調査報道の問題点も浮き彫りにしている。

   調査報道に定石があるとすれば、入手した資料が本物であるかどうかの確認が最優先課題であるのは言うまでもない。さらに、そこに書かれていることを当事者や関係者が認めるかどうかが成否のカギを握る。ところが朝日は、NHKに先を越されて報じられたために、資料が本物である裏付けは取れたものの、最終的に関係者に当たる作業に取り掛かかる前に報じざるを得ない状況に陥ってしまったようだ。

   今回の文書は、あくまで官邸や内閣府の幹部が文科省に伝えた言葉を文科省の担当者が記録に残していた、いわば又聞きの二次情報だ。かといって、これを発言した当事者に認めさせるのは容易ではない。だが、周辺の人間関係や政治的なしがらみのなかで、秘密裏に取材に応じてくれる人物はいるはずだ。最も肝心なのは、当事者たちに抜き打ちで、しかも同時に当たることだ。一連の文書の存在を知らない当事者たちのコメントのどこかに、綻びは生まれることがある。記事が出てしまってからでは、いくらでも口裏を合わせることができる。

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