東京都内の中古バイク販売店がYouTubeで公開した動画の内容が、インターネット上で「危険すぎる」などと物議を醸している。
問題の動画には、公道上で走行しているバイクに搭載したドライブレコーダーを故意に対向車と接触させるシーンがある。投稿者は、レコーダーの性能を試す目的だったと動画の中で説明しているが、J-CASTニュースの取材に応じた弁護士は「安全運転義務違反」の可能性を指摘する。
「これから走って事故ってきます」
動画を投稿したのは、東京都武蔵村山市にある中古バイク販売店。この店では、これまでにもバイク用品のレビュー動画などを数多くYouTubeにアップしていた。
問題の動画は2017年12月25日に公開されたもので、「バイク正面衝突事故にも耐えるドラレコ」とのタイトルが付いている。あるバイク用品メーカー(映像では社名を確認可)が販売しているドライブレコーダーの性能を試すという内容だ。
冒頭では、店主とみられる男性が「ドラレコ衝突実験ということで、これから走って事故ってきます」と宣言し、バイクで道路を走りだす。周囲にはコンビニや信号が映っており、公道のようだ。そして、対向車線を走る車(撮影協力者が運転しているとみられる)のミラー部分にレコーダーをぶつけている。
この動画では、レコーダーが撮影した衝突の瞬間の映像を紹介。衝突後にレコーダーの映像が「横向き」になったことから、どうやら、ぶつかった衝撃でレコーダー部分が取り外れたか、バイクの車体そのものが横に倒れたようだ。
その後、男性はレコーダーが撮影した映像を振り返りながら、
「衝突の瞬間までしっかり映っています。ナンバーも、相手のドライバーの顔も映っています。激突の瞬間には映像がぐにゃぐにゃと歪んでしまいますが、その後も普通に録画はされ続けています」
などと商品を好意的にレビュー。「思いっきりぶつけたにも関わらず、傷はつきましたが壊れてない!」とも話していた。
また、動画の中で男性は、今回の「実験」ではバイクと対向車の双方が時速40キロで走っていたとも説明。激突の衝撃で車のミラーが大きく破損したとも報告し、ミラーのカバーに穴が空いた様子を映像で紹介した。
弁護士に見解を聞くと...
この動画の終わりでは、「この動画はドライブレコーダーおよび胸部プロテクターの普及推進を目的に製作されました」「過激な表現を意図的に用いています」などとして、「理解の上での視聴とリアクションを望みます」といった説明文が表示される。
しかし、今回の動画を見たネットユーザーからは、公道でバイクに搭載したレコーダーと対向車を接触させた投稿者を問題視する意見が出ることに。ツイッターやネット掲示板には、
「往来のある公道で何やってんの?」
「これ飛んでって誰かに当たったり、車に当たったらどうすんだよ」
「影響力の大きいYouTuberが公道でこんな実験して真似する奴が出てきたら それこそ本当の事故に繋がって危険だと思わんのか?」
といった指摘が出ている。ただ一方で、動画のコメント欄には、「すごい実験ありがとうございます」「まさに検証。素晴らしい」といった好意的な意見もみられた。
そもそも、今回の動画のように故意に公道上でバイクに搭載したレコーダーを対向車に接触させる行為は、何らかの罪に問われるのだろうか。
J-CASTニュースが12月27日、弁護士法人・響の天辰悠弁護士に見解を尋ねると、まず「道路交通法において、車両等の運転者は、周囲の状況に応じて他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない安全運転の義務を負っています」。
その上で、今回の動画のような行為については、
「車両が道路を塞いだり、破損物が飛び散ったりと周囲に危害が及ぶ可能性がありますので、安全運転義務違反といえるでしょう。罰則としては、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金と定められています」
との見解を示した。
また、天辰弁護士は動画の撮影などのロケで道路を使用するためには、所轄警察署長の許可を受ける必要があるとも説明。そのため、「警察署長の許可を得たうえ、提示された条件に従い交通事故実験を行うのであれば道路交通法違反に問われることはないでしょう」とも話していた。
提供メーカー「動画の制作には一切関わっておりません」
今回の撮影にあたって、投稿者側は警察の許可を得ていたのか。
動画の中では、店主と見られる投稿者はその旨について一切言及していない。また、J-CASTニュースは27日、動画を公開したバイク用品店に取材を依頼したが、同日19時までに回答はなかった。
なおネット上では、動画の中で男性が「実験」に使用したレコーダーはバイク用品メーカーから提供を受けたと明かしていたことから、提供側の責任を問う声も出ている。この会社の広報担当者は27日夕の取材に対し、
「投稿者に製品を提供したことは事実ですが、動画の制作に当社は一切関わっておりません。このような形の動画が出ることも全く知りませんでしたし、困惑しているというのが正直なところです」
とコメントした。今後、投稿者側に対しては動画の取り下げを求めていくという。