元横綱・日馬富士の暴行事件で、被害者である貴ノ岩の師匠・貴乃花親方に「業務停止」処分が下る可能性があると一部で報じられたが、あり得るのだろうか。「減給」処分の八角理事長や横綱・白鵬より厳罰ということになる。
仮に業務停止となれば、弟子の稽古の指導ができなくなる。このような状態は、親方稼業にとって「最大の侮辱」だという見方もある。
「八角理事長のように『報酬減額』で終わらせるのではないか」
日本相撲協会側は、貴乃花親方が巡業部長でありながら暴行の報告義務を怠ったことや、弟子の貴ノ岩の聴取を複数回拒んできたことを問題視。スポーツ報知が2017年12月26日付で報じた協会関係者の話によると、20日の臨時理事会時点で貴乃花親方は「業務停止」処分とする見通しだったが、親方への聴取ができておらず先送りされた。25日に聴取が実現したことで28日の臨時理事会で処分が決まる見通しとなっているが、同日の臨時評議員会次第ではより重い「降格」となる可能性もあるという。
協会の処分規定は、厳罰順に(1)懲戒解雇(2)引退勧告(3)降格(4)業務停止(5)出場停止(6)報酬減額(減給)(7)譴責――の7つがある。20日の臨時理事会で決まった処分は、既に引退していた加害者の日馬富士が「引退勧告」相当、その師匠・伊勢ヶ浜親方は理事辞任のうえ2階級の「降格」だった。
一方、現場に同席しながら暴行を止められなかった白鵬や鶴竜、協会トップの八角理事長は、それぞれ程度は異なるが「報酬減額」だった。もし貴乃花親方が「業務停止」となれば、この3者より厳罰ということになる。具体的には、たとえば弟子の稽古の指導ができなくなる。
このような処分はあり得るのか。東京相撲記者クラブ会友の大隅潔氏は26日の「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)で、「理事辞任(降格)は加害者側の伊勢ヶ浜親方だけで、あとは報酬減額で済んでいます」とし、
「それを考えると、『業務停止』は親方稼業の最大の侮辱というか、辞めなさいという印象も受けます。弟子を預かっている親方からしたら非常に屈辱的で、騒動にさらに火をつける感じになってしまう。私は八角理事長のように『報酬減額』で終わらせるのではないかと想像しています」
と推測を述べた。
八代氏、貴乃花は「社会的に極めて常識的な対応」
加えて大隅氏は、巡業部長としての業務停止は「もう受けている」とも話す。それは貴乃花親方を冬巡業に帯同させなかったことだとし、協会側の対応をこう批判している。
「白鵬が『あの親方のもとでは巡業に行けない』(編注:11月28日の八角理事長の講話の席で発言)と。普通こういう時、協会は『力士の本分を忘れるな、何を言っているんだ』と怒るところなのですが、『力士会を通じて伝えてほしい』とか何とか言って容認し、その翌日(貴乃花親方に)『巡業に行かなくていい』と。『貴ノ岩の介護とその他のことに務めてくれ』とか言われて、外されているんですよ。それもひとつの処分だったと見ています」
26日の「ひるおび!」(TBS系)では、八代英輝弁護士が「現場にいた横綱(白鵬と鶴竜)が、(貴ノ岩が)殴られて血を流すまで止めずに『減給』で済んでいるのに、現場にいなかった巡業部長(貴乃花)が報告しなかったという理由で『理事解任』という重いペナルティになるのか」と疑問。また、
「報告義務違反と、非協力的だったことを理由に処分するとなると、『警察・検察の捜査が終了してから協力します』という言い分が許されないことになります。社会的に極めて常識的な対応のはず」
と厳罰に否定的だった。