カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は2017年12月15日、中堅出版社の「主婦の友社」(東京都文京区)を買収したと発表した。
CCCはこのところ、15年に月刊誌「美術手帖」などを発行する「美術出版社」(東京都渋谷区)、17年3月には週刊誌「アサヒ芸能」やコミック、文庫本などの「徳間書店」(東京都港区)を傘下入りさせ、矢継ぎ早に出版社を買収している。動画配信などの浸透で経営の柱であるレンタルビデオ事業が縮小する中、雑誌や書籍を巡るコングロマリットとして再成長を目指している。
老舗・主婦の友社を買収
CCCは、総合印刷業の大日本印刷が保有する主婦の友社株式99.9%を取得した。買収額は公表していない。主婦の友社はかつて、社名でもある月刊誌「主婦の友」(2008年休刊)を発行。同誌は戦後、「婦人倶楽部」「主婦と生活」「婦人生活」とともに「4大婦人誌」と呼ばれた主婦向け雑誌で、4誌の中で1917年創刊と、最も古い。また、今では4誌とも発行されていないが、4誌のうち最後まで発行されていたのが「主婦の友」だった。つまり婦人誌の老舗出版社であり、編集などのノウハウは相当蓄積されていると言える。主婦の友社は現在、ファッション誌「Ray(レイ)」「SCawaii !(エスカワイイ)」などを発行し、売上高は2017年3月期に86億円。
CCCとしては今後、「リアル書店」に一定の商機があると考えている。それを進める上で出版社が持つ人脈や事業展開のノウハウを活用する狙いで、次々と買収に動いているわけだ。書店こそ、日本中で廃業が相次ぐ厳しいビジネスではあるが、CCCは近年、「蔦谷書店」ブランドでこだわりの店を次々と出店している。例えば松坂屋銀座店の建て替えでできた商業施設「GINZA SIX」に2017年4月開業した「銀座 蔦谷書店」は、画廊の多い銀座の雰囲気も生かし、アートをテーマにしている。これに先立って買収した美術出版社のノウハウが店づくりに生きているのだ。主婦の友社は長年、女性をターゲットにした雑誌や書籍を出版しており、対象となる年齢も若年層から高齢層まで幅広い。そのコンテンツ力を店づくりにも生かし、集客につなげる構想だ。
書籍雑誌を巡るコングロマリット
徳間書店については、コンテンツ力もさることながら出版社としての「地力」に期待しているとみられる。例えば、CCCが制作にかかわった2018年1月公開の映画「嘘を愛する女」について、公開に先駆けて徳間書店が書籍化するという、メディア融合的な展開を進めている。こうなると書籍雑誌を巡るコングロマリット(複合企業)と言えなくもない。
かつて日本の津々浦々に存在し、映画館に行かなくても楽しめる映像を人々に提供したレンタルビデオ店は、今や櫛の歯が欠けるように消えており、CCCの経営にも悪影響を与えている。CCCは再成長を目指して格安スマートフォンも手がけるが、「Tポイント」事業に並ぶ柱となるには力不足は否めない。ただ、ネットに押されながらも一定の集客を見込める、こだわりの書店は伸びる可能性があるとみている。実際、2016年の書店事業の売上高は1308億円で紀伊國屋書店(1033億円)を上回り首位だ。出版社を買収し、書店を展開するCCCは、アマゾンのようなネット通販とは別の角度から従来の書籍ビジネス業界を揺さぶってもいるようだ。