岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
エルサレムの首都認定で米ユダヤ人が考えること

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「聖書を読めば、あの土地はユダヤ人のもの」

   「でも、パレスチナ人の言い分はわかる? 彼らが先に住んでいた土地だったという......」と私が質問を投げかける。

   ジャシュワは少し沈黙し、口ごもりながら続けた。

「彼らの言い分はわかる。でも聖書の時代に遡れば、あそこにはユダヤ人がいたんだ。聖書を読めば明白だ。あの土地はユダヤ人のものなんだ」

   デビーが口を挟む。

「時代的にもモハメッドよりずっと前だわ。それにしても、トランプがエルサレム首都認定と大使館移転を言い出した動機は、何なのかしら。なぜトランプは、親ユダヤなのかしら」
「支持率が落ちているから、選挙公約を守って、支持基盤であるキリスト教福音派(evangelicals)やユダヤ人を満足させたかったと言われているけれど」

   2014年の調査によると、アメリカ人の4人に1人がキリスト教福音派だ。彼らのなかにはトランプ支持者も多い。ユダヤ人はアメリカの総人口の2%にすぎないが、政治的にも影響力が強い。

   私がそう答えると、デビーが深くうなずく。

「なるほどね。イスラエルに行った時、飛行機で隣になった女性が福音派だった。福音派はイスラエルに多額の寄付をしていると言ってたわ。彼らのなかには、イスラエルは神がユダヤ人に与えた土地だと信じている人が多いから。でもね、私はもっと大きな別の理由があると思っているの」

   そう言うとデビーは、興味深い話を始めた。 (この項続く)(敬称略。随時掲載)


++ 岡田光世プロフィール
岡田光世(おかだ みつよ) 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計37万部を超え、2017年12月5日にシリーズ第8弾となる「ニューヨークの魔法のかかり方」が刊行された。著書はほかに「アメリカの 家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。


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