「よくやってくれた」
友人のデビー(55)は、頑なに伝統と宗教を守り続ける正統派ユダヤ教徒だ。
「アメリカを支持しているのは、聞いたこともない小国とか、あまり影響力がなさそうな国。世界の主要諸国はどこも支持していないけれど、私たちユダヤ人はそんなこと、慣れっこだから。殺されてきたわけだし」と苦笑する。
今回、アメリカを支持したのは、トーゴ、ミクロネシア、グアテマラ、ナウル、パラオ、マーシャル諸島、ホンジュラスだ。
CNNニュースではニュースキャスターがベネズエラやシリア、中国などアメリカに反対した国を挙げ、「人権や安全も保障されていないような国に、アメリカが説教されたくない」と報道し、同局の別の番組では「国連は元々、パレスチナ寄り。さらにトランプということで、風当たりが強かった」と分析していた。
トランプ大統領の今回の首都認定を、「よくやってくれた」、「勇気ある行動だ」と高く評価する声も目立つ。アメリカでは1995年に上下院の圧倒的多数で、「エルサレム大使館法」が成立した。しかし、この法律は大統領が先送りを命じることができるため、これまで22年間、歴代の大統領はパレスチナへの影響を考慮し、先送りしてきたからだ。
ジョージア州アトランタに住むキリスト教徒のジョナサン(40代)は、「ブッシュもクリントンもオバマも実現しなかった選挙公約を、トランプは実行した」と評価している。
前出のデビーの夫・ジャシュワ(60)も当然、正統派ユダヤ教徒だ。彼の父親は、第2次世界大戦中に杉原千畝氏の「命のビザ」で救われたひとり。日本を経由し、アメリカに移住した。
いつも陽気に冗談ばかり言っているジャシュワが、この話になると声を荒げた。
「トランプがエルサレムをイスラエルの首都に認定したって? 何も目新しいことじゃない。ほかの国がどう考えようと、エルサレムはこれまでもずっとイスラエルの首都だった。国連やほかの国が認めない? そんなこと、関係ないだろ。じゃあ、君に聞きたいんだが、エルサレムを首都と認定しなかったら、中東の状況がよくなるとでも思っているのかい?
今回のパレスチナ人の抗議は、僕らを攻撃する新たな言い訳に過ぎない。ユダヤ人が何度、譲歩したと思ってるんだ。ユダヤ人がイスラエルから出て行かない限り、彼らは満足しない。パレスチナ人が求める『和平』は、それしかない。ただ、アメリカを支持しない国に対して財政援助を打ち切るというのは、賛成できない。どの国も自由に意見を表明する権利がある」