嘘だった「AED使った男性をセクハラで...」 投稿主「問題提起のつもりだった」

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   意識を失った女性へのAED(自動体外式除細動器)使用に関する「デマ」が、ツイッターなどで拡散される騒動があった。

   問題のデマの内容は、架空の会社が行ったアンケートで、多くの女性社員がAEDを男性に使われた場合「セクハラで訴える」と答えた、などというもの。その後、投稿者はウソを認め謝罪したが、インターネット上では「女性の救助をためらう男性が増えたのでは...」といった心配の声も広がっている。

  • AEDは様々な場所に設置されている
    AEDは様々な場所に設置されている
  • 日本光電の「AED救命テント」
    日本光電の「AED救命テント」
  • AEDは様々な場所に設置されている
  • 日本光電の「AED救命テント」

服をはだけさせ、両胸の素肌に直接パッドを当てる

   騒動の発端は、あるツイッターユーザーが2017年12月20日に投稿したツイートだ。使用時に対象者の服をはだけさせ、両胸の素肌に直接パッドを当てる必要があるAEDの使用について、

「社内アンケートの結果『男性にされたらセクハラで訴える』という女性社員が多かったため、女性社員が倒れていたときの救助活動一切を女性にさせ、男性しかいないときは女性を呼び出すか、契約書に本人の署名をしてもらってから救助する。という会社に遭遇した」

と投稿。続けて、「女性の意思を尊重した結果なので、男性社員は誰も文句を言わずに受け入れてましたが、女性社員はなんか喚いていたらしい」とも発信していた。

   この投稿は1万回以上もリツイート(拡散)されるなど大きな注目を集め、ツイッターやネット掲示板には、呟かれた内容を信じたユーザーから「何もしない方がマシ」「もう女性にはAED使わなければいい」との意見も出ることになった。

   しかし、拡散された上記のツイートは全て真っ赤なウソだった。投稿者が12月22日未明、自身のブログで、

「一連のツイートについては、全て誇張等を含んだ、嘘のツイートになります。私のツイートで、主に女性の皆様をはじめ多方面ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありませんでした。このブログには嘘、偽りがないことを誓います」

と謝罪したのだ。

   ブログでの説明によれば、投稿者は自らのツイートに注目を集めたいがために、実在しない会社や社員の発言を捏造したのだという。あわせて、一連の投稿は「問題提起のつもりだった」とも釈明していた。

弁護士「罪に問われることはありません」

   デマツイートを発信したユーザーは「市民救命講習をうけ、ひとりでも多くの人命を助けられるよう、努力していきます」と反省の意をブログに記している。だがインターネット上では、一連の誤情報がもたらす影響を心配する意見も広まっている。

「女性相手にAED使うのをためらう人が増えるんだろうなあ」
「こういうデマが出回ると意識不明の女性はAEDあっても放置されて助かるはずが助からないなんて起こりそうで怖いね...」
「真面目に救護の備えをしている人々を邪魔する流れを煽るような不安を感じました。悪質です」

   実際のところ、AEDを使った救護活動で女性の衣服をはだけさせるなどした場合に、使用者が罪に問われることはあるのか。弁護士法人・響の天辰悠弁護士は、22日のJ-CASTニュースの取材に対し、「罪に問われることはありません」と話す。

   その上で、AED使用のために衣服をはだけさせたり下着を取ったりする行為そのものは強制わいせつ(対象者が意識を失っていれば準強制わいせつ罪)にあたるが、

「最高裁判例では、行為そのものが持つ性的性質が不明確で、行為が行われた際の具体的状況等をも考慮に入れなければ性的な意味があるかどうかが評価し難いケースは性的意図の有無を考慮すべきと判示されています。よって、救命目的での行為であれば、この要件を満たさないので犯罪は成立しません」

と指摘する。

   続けて、AEDの迅速な使用のために、ハサミで衣類を切るようなケースについても、その行為自体は器物損壊罪にあたるとしたが、

「しかし、救命のためやむを得ずした行為は、その行為で生じた被害(=今回の事例では衣類の破損)が、避けようとした被害(=死亡という結果)の程度を超えない限り、緊急避難行為として罰しないこととされています」

と説明。その上で、「いちど失われれば取り返しのつかない命の方が重要ですから、衣類を切る行為は犯罪とはなりません」とした。

女性へのAED使用時の注意点は?

   また、NPO法人「AED普及協会」(埼玉県熊谷市)代表理事の大久保実氏は22日の取材に、女性にAEDを使用する際の注意点について、

「私どもの講習では、人で壁を作って周囲の目をさえぎったり、大きな声で『救命行為をしています』と叫んだり、できれば使用時に配慮をすることが望ましいと教えています」

と話した。そのほか、AEDを扱う医療電子機器メーカーの日本光電(新宿区)では、救護をされる人のプライバシーを守るためのテントも販売している。同社の担当者によれば、主にショッピングセンターなど人の多い施設での導入例が多いという。

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