米国がエルサレムをイスラエルの首都に正式に認定し、大使館移転を決めた問題で、国連総会は2017年12月21日(米東部時間)、緊急会合を開いて圧倒的多数で米国の決定を非難する決議案を採択した。
米国の決定直後から中東や欧州諸国は米国を批判してきたのに対し、日本は表立った批判を控えてきたが、今回は賛成に回った。
エルサレムめぐる決定は「法的効力はなく、無効で、破棄されなければならない」
緊急会合はトルコとイエメンが要請。決議案は米国を名指しこそしていないものの、エルサレムの地位の変更をめぐる決定に「深い遺憾」の意を表明し、決定は「法的効力はなく、無効で、破棄されなければならない」とする内容だ。
採択に先立って、米国のヘイリー国連大使は米国が国連に多額の資金を拠出していることを挙げながら、
「米国は大使館をエルサレムに置く。これは米国民が我々に望んでおり、正しいことだ。いかなる国連の投票でも、これは変わらない。しかしこの投票で、米国の国連を見る目が変わるだろう。そして、国連の場で我々を軽視する国々を見る目も変わるだろう」
と演説し、けん制。トランプ大統領も12月20日、
「反対票を投じたければそうさせておけばいい。節約になるので気にしていない」
などと述べていた。
菅長官「当事者間の交渉で解決すべき」
加盟する193か国のうち、米国以外の常任理事国(中国、フランス、ロシア、英国)や日本など128か国が賛成した。カナダやメキシコなど35か国が棄権し、21か国は投票に参加しなかった。反対したのは米国とイスラエルの他、グアテマラ、ホンジュラス、マーシャル諸島、ミクロネシア、ナウル、パラオ、トーゴの計9か国。当該2か国以外は、米国の影響が強い中米や太平洋の島国ばかりで、トランプ政権の発言の影響を受けた可能性がある。
菅義偉官房長官は12月22日午前の会見で、賛成に回った理由を問われ、
「我が国はたびたび申し上げているが、イスラエル・パレスチナ間の紛争の2国間解決を支持している。エルサレムの最終的地位の問題を含め、これまで累次採択されてきた関連安保理決議案、これまでの当事者間の合意に基づいて、当事者間の交渉で解決すべきであるという立場。こうした立場を踏まえて、同決議案に賛成した」
と答弁。これまで築いてきた中東諸国との関係を重視した可能性もあるが、従来と同様の見解を繰り返した。