横綱審議委員会(横審)の北村正任・委員長が会見し、暴行事件を起こして引退した元横綱・日馬富士らについての横審の結論を説明した。
横綱3人が同席した場で起きたこの暴行事件だが、会見では横綱を推挙した横審の責任について、目立って語られることはなかった。この点で八代英輝弁護士は、「自己反省とか遺憾の意とか、一言くらいあってもいいんじゃないですか」と横審を批判した。
「ご自身が、横審が推挙したんじゃないですか」
臨時の横綱審議委員会は2017年12月20日に開かれた。北村委員長はその後の会見で、日馬富士には「引退勧告に相当する」とし、現場に同席しながら止められなかった白鵬・鶴竜の両横綱には「厳重に注意するべきと進言する」とした。
横審は日本相撲協会の諮問機関。横綱に関する案件で協会に答申や進言を行っており、力士の横綱昇進を推挙する際に注目されることが多い。
会見で、暴行事件が起きたことで「横綱を推挙した責任」についてどう考えているかとの質問が出ると、北村委員長はこう答えていた。
「横綱推挙の要件は、品格・力量が抜群であること。力量は場所の成績でわかる。品性については、日常どういう生活をしているか、稽古場でどうであるか、本場所の土俵上でどうあるかは若干見えますが、そういうことを委員会自身で調査するわけにもいかない。その力量もないし権限もない」
こうした説明に八代英輝弁護士が疑問を呈した。20日放送の「ひるおび!」(TBS系)で、「私は今回の横審の進言はまったく意味がないと思う」としてこう述べた。
「横審の威厳を下げるものだったような気がしました。日馬富士は当事者で加害者。非難している白鵬や鶴竜も横綱ですよね。ご自身が、横審が推挙したんじゃないですか。その件についての自己反省とか遺憾の意とか、一言くらいあってもいいんじゃないですか」
「『引退相当だったね』と後で言っても何の意味もない」
デーモン閣下が「横審はメンバーが徐々に替わっていますからね」と口を挟んだが、八代氏は「組織としてですよ。横審を個人として考えてはいけない。僕は横審という組織に対して言っている」と反論した。
また、横審がまとめた意見についても
「協会全体で暴力根絶に取り組んでいる中、また暴行を起こした責任は大きいということで、横審としては、引退したけど『懲戒解雇相当』とするとか、そこまでするなら意味がありますけど、すでに引退届を出して受理された人間に『引退相当だったね』と後で言っても何の意味もない。すごく厳しいことを言ったように見えますけど、横審たるもの本当はもっと厳しくないといけないのではないですか」
と提言した。
北村委員長の会見での説明に対しては、ツイッター上でも「何のためにあるんだこの委員会」「横審て何者という事になる」「成績だけ見て横綱決めるだけなら観に来てる客でもできるやんけ」と存在意義を問う声が続出している。
20日は横審の後で臨時理事会が開かれ、その後八角理事長が会見で関係者の処分内容を発表した。日馬富士は引退勧告相当、白鵬は2018年1月の給与全額不支給と同2月の給与50%減、鶴竜は18年1月の給与全額不支給とした。日馬富士の師匠・伊勢ヶ浜親方は理事を辞任。八角理事長自身は18年3月までの任期の報酬を全額返上。被害者である平幕・貴ノ岩の師匠で巡業部長の貴乃花親方の処分は、まだ聴取ができていないことから先送りされた。