北海道小樽市の森井秀明市長(45)が市庁舎内の廊下で、60代の男性に「もっと謙虚にならなきゃダメだ」と声をかけられお尻を叩かれた。市長は暴力を受けたとして警察に通報、その男性は公務執行妨害容疑で現行犯逮捕された、との報道があった。
ネット上では市長に対し「これで逮捕?」「市長はちっさい男だ」といった批判が出たが、この「事件」を間近で目撃したという市の秘書課の担当者がいる。そして「一方面から見ただけの報道だ」と頭を抱えている。
男性は即日釈放
市の秘書課と複数の報道によれば、「事件」のあらましはこんな具合だった。まず、2017年12月15日の市議会予算特別委員会終了後の17時過ぎの市庁舎の廊下で、市議会を傍聴していた同市の60代の男性が森井市長と擦れ違いざまに「もっと謙虚にならなきゃダメだ」と声をかけ、素手でお尻を叩いた。市長は秘書課の担当者に警察への通報を支持し、駆け付けた署員が男性を公務執行妨害容疑で現行犯逮捕した。市長は被害届を出し署は受理した。男性は即日釈放された。
これを受け18日の委員会では、市民を守る立場にある市長が真っ先に市民を犯罪者に仕立て上げるような事はあってはならない、との追及が始まった。通報するのは明らかな暴行があったケースであり、市長はまず男性に対し止めるように説得すべきだ、とし、現場を見たという参考人招致が行われ、招致された人物は市政運営などを頑張ってもらいたいとの「激励」の行動で、暴力的な行為には見えなかったと証言した。森井市長はこの件について一言も口を開かなかった。では市長のお尻を叩いた男性はどんな人物かといえば、議会を毎回のように傍聴しにくる市政に関心の高い人なのだという。
ネット上ではこのニュースに、
「ちょっと尻を叩かれたからと暴力行為として警察沙汰にしたそうですね。しかも、いつも傍聴に来て小樽市政を心配しているような市民を」
「まぁでも、これぐらいでブチ切れるんなら、器の小さいおっさんだな」
「失礼な行為だけど警察呼ぶのはやり過ぎ。警察だってこんなことで呼ばれても迷惑だろ」
などと市長に対する批判のほうが目立っている。
ところが市の秘書課ではこうした報道は片側から見ているものだとし頭を抱えているのだ。J-CASTニュースは12月20日、小樽市の秘書課に取材した。
辞職勧告決議案が提出され賛成多数で可決
森井市長の後方に付き「事件」を直接見ていた、という担当者は、
「男性は市長と擦れ違いざま、大きな声を出して、お尻と腰の間辺りを挨拶とはよべない強い力で叩き、市長がよろめきました。『そんなに強く叩く?』と驚きました。大きな声だったため、何を言ったのかは聞き取れませんでした」
と打ち明ける。新聞記事は委員会での参考人の証言を基にしているため、市長に対する批判が起こっているのは仕方のないこと、とも。市長と市長を叩いた男性に面識があったのかは分からないが、議会の傍聴に訪れては市長に対し大きな声でヤジを飛ばす人物として有名なのだという。そういうこともあって、市長は通報を決めたのではないか、と推測をしていた。
実は森井市長、議会とは対立関係にある。10月10日には森井市長と、森井市長が抜擢した上林猛副市長への辞職勧告決議案が提出され、市長の辞職勧告は有効票15票のうち14票、副市長は有効票18票のうち17票が賛成し可決された。副市長は2020年1月末までの任期を残し17年11月末で辞任した。市の事業を優先的に市長の後援会関係者に回しているとか、市の人事を自分の都合がいいように動かしている、虚偽の証言が多い、など「市長失格」と騒がれ続けた。実際にそれが本当なのかは分からないが、そもそもは15年4月の市長選挙から森井市長の周りは対立する人物に囲まれていた。というのも、自民、公明、民主、連合小樽、小樽商工会議所という磐石な支持基盤を持つ、当時現職の中松義治市長を、無所属の森井市長が大差で破っている。結果的に森井市長の周りは「オール野党」という形の船出になったのだ。小樽市地元の掲示板を見ると、長老の政治家たちは森井市長を若造だ、支持基盤が弱いと見下していて、思い通りの市政ができないのではないか、と心配する声もある。今回の暴力事件だとしての通報もこうしたことに関係があるのではないか、と考えている人もいる。