元電通社員の男性から受けたセクハラ被害を実名告発した作家でブロガーのはあちゅう氏(本名・伊藤春香=31)が2017年12月19日、「お詫び」と題した文書を発表した。
一体なぜ、セクハラ被害を訴えた当人が謝罪に追い込まれたのか。実はインターネット上では、今回の告発をめぐる騒動に関して、はあちゅう氏の過去のツイッター上での発言が問題視される事態となっていた。
騒動の発端は...
発端となったはあちゅう氏の「セクハラ告発」は、ニュースサイト「Buzzfeed」が2017年12月17日付け記事で伝えたものだ。
記事には、はあちゅう氏が電通に在籍していた2009年から11年までの期間、同社社員(当時)で広告クリエイターの岸勇希氏(40)から度重なるセクハラやパワハラを受けた、などの証言が掲載されている。結果、はあちゅう氏は入社から2年6か月で電通を退職したという。
Buzzfeedの取材を受け、岸氏は17年12月16日にブログを更新。はあちゅう氏の告発の一部を「事実です」と認めた上で、「彼女を傷つけ辛い思いをさせたこと、今日まできちんと謝罪できなかったことを、ただただ申し訳なく悔やんでおります」などと謝罪した。
この報道を受けて、岸氏は広告会社「刻キタル」(東京都港区)の代表取締役を18日付で辞任、退社した。同社は、岸氏が4月に電通を独立して設立したばかりだった。
こうしたセクハラ告発をめぐる流れの中で、一部のネットユーザーが着目したのは、はあちゅう氏による過去のツイッター上での発言だった。
彼女が過去に「童貞」の男性をイジったり、小馬鹿にしたりするような投稿を繰り返していたことを問題視する動きが出ていたのだ。そのためツイッターやネット掲示板には、「童貞いじりツイート」に傷ついていたなどと訴えるユーザーから、
「はあちゅうさんの童貞disは駄目でしょ セクハラパワハラの加害者がセクハラパワハラの加害者を告発してる」
「ひどいセクハラを受けたはずのはあちゅうが今では童貞という言葉を転がして遊んでいるわけで、それはそれでハラスメントだろと思う」
「はあちゅう氏らの童貞いじりは完全に『いじめの構図』で、見るに堪えない」
といった批判的な声が相次ぐ騒ぎになっていた。
「♯MeToo」運動の一環との指摘も
その後、当のはあちゅう氏は18日昼のツイートで、自身が過去に記した「2010年以降、『童貞』は堂々と言っていい&モテの要素になった」と題したブログ記事を紹介することで批判に反論。その上で、
「本人が堂々と公言している童貞(中略)をコミュニケーションネタとしていじることや下ネタとセクハラは違うと思うんですけどねー。明るく楽しく笑えるものが自粛になるのは嫌だな」
ともツイートしていた。
こうしたはあちゅう氏の反論を受けて、ネット上では、「セクハラ加害者と同じ理屈」「自分のセクハラモラハラにはとことん鈍感なのですね...」といった指摘が相次ぐことに。なかには、米ハリウッドで生まれたSNSの告発運動「♯MeToo」を用いて、
「これははあちゅう氏の言葉に傷つけられた男性の#metoo なのでは?」
「童貞いじりで傷ついた人が今のタイミングで#metooするのはむしろ正しい」
と、はあちゅう氏の過去の発言を問題視する動きを肯定的に捉える意見もあった。
はあちゅう氏「私の認識不足もあった」
このように、自身のセクハラ告発に端を発した騒動を受けて、はあちゅう氏は19日夕、「過去の『童貞』に関する発言についてのお詫び」と題した文書をウェブサイト「note」上で発表した。
はあちゅう氏は謝罪文で、童貞を揶揄するような自身の発言について「私の認識不足もあった」として、
「私自身の『童貞』という言葉に対するイメージが、世間一般の持つ『童貞』という言葉に持つイメージとかけ離れていることに今回、多くの皆様のご指摘により気づかされました」
と言及。続けて、はあちゅう氏の周りには童貞をブランディングに利用している友人などが多かったため、
「(童貞という言葉を)差別意識なく使っていましたが ツイッターでご指摘を受けたように 童貞=社会的弱者という言葉のニュアンスがあること、また、そのように受け止めてしまう人が多いことに対しての意識がありませんでした」
とも振り返った。
その上で、はあちゅう氏は「予想以上に多くの人がこの言葉に不快感を持っていること」に気付かされたなどとして、
「童貞というデリケートな言葉を軽々しく使ったことで傷つけてしまった方に深くお詫びするとともに 今後は発言や個々人が持つ言葉のニュアンスの違いに気を付けるよう、意識を引き締めていきたいと思います」
と謝罪している。