【すくすく子育て】(Eテレ)2017年12月9日放送
「なんとかしたい!家事ストレス」
育児中の家事は大変だ。なかなか思うように進まず、イライラが募ることも多い。
番組では、家事をしながらおだやかに子育てする術や、夫婦間の上手な家事シェアの方法を、國學院大學の水無田気流教授と、玉川大学の大豆生田啓友教授を交えて考えた。
「家事やらない」宣言の双子パパを改心させたい
真悟(しんご)くんと健悟(けんご)くん(1歳8か月)の双子を育てる祖父江さんは、出産を機に仕事を辞めて専業主婦になった。結婚当初から「家事はやらない」と宣言していた夫は出産後も変わらず。ならば家電の力を頼ろうと、食器洗浄機、衣類乾燥機、お掃除ロボットを買ったが...。
祖父江さん「私が大変だから食洗機を入れてほしいと言っても、(夫は)『本当にいるの?別に自分でやったらいいんじゃないの?』みたいな」
さらに「家電があるから大して家事なんかしてないじゃん」とも言われる。子供の面倒を見ながら家事をする大変さを全くわかってくれないが、専業主婦なら家事は一人ですべきなのか。
大豆生田氏「働いているママより、専業主婦のママの方がストレスが大きいという研究結果もある。育児と家事をするのがどういうことかはやらないとわからない。パパ自身がちょっとした家事から始めるのが大事。パパが家事をすると、家族に明らかに貢献している感覚が出てくるし、ママの笑顔も増える。家事をするパパの姿が子供の生き方のモデルにもなる」
水無田氏は苛立ちをあらわにする。
水無田氏「専業主婦だったら夫が家事をやったら意味ないじゃんみたいな話をする人多いんですけど、その発想は家事代行や家政婦など、サービスを購入する消費者の意見。家庭って経済の論理じゃなくて生活の論理で成り立っていて、二人で作る場」
水槽掃除率先するも「他の家事やって!」
凛音(りん)ちゃん(6歳)、麗奈(れな)ちゃん(4歳)、優冴(ゆうご)くん(4か月)を育てる岡澤さんは現在育休中だが、夫が頼んだ家事しかやらないのが不満だ。
岡澤さん「風呂掃除、トイレ掃除、掃除機(かけて)って言うと、1個やると座ってもう1個やって座って、3個目どうしたか聞くと『やってなかった』みたいな。休憩してスマホいじってる間にやる気がなくなっているのか、やるのを忘れているのか、もうやりたくないから座っているのか...」
VTRを見る限りでは、夫は掃除も丁寧で、リンゴの皮むきも手慣れた様子だ。「基準が高いんだよ...標準よりやってるんだよ」と弱々しく反抗する。
メダカの水槽の掃除は毎朝自発的にやっているが、「メダカの水槽の掃除望んでないの!」と岡澤さん。その時間があるなら別のたまった家事をやってほしいそうだ。
水無田氏「ママからしたら、メダカの水槽の掃除は、10対1くらいで負けている試合で1本だけ打ってるホームランですよね。ピンチの時に助けてよ、今打ってよって場面でバッターボックスに立ってくれず、どうでもいいところで自分の打率だけ上げようとしているように見える」
大豆生田氏「要求水準が高いとパパ側からよく聞く。むしろ期待されていると思ったらいい。今のところは受け身で、やれって言うからやるよって感じですよね。そうじゃなくて、まずはこれをやろうと具体的に挙げたらいい。ママからも『それは助かる』とか、やった時はほめてもらえた方が伸びる。それがコミュニケーションになるし、家事の共同作業で夫婦関係がよくなる」
育児中は完璧な家事から「戦略的撤退」すべし
食器を洗った後に置く場所が違うなど、夫婦で互いの家事のやり方が違うとイライラし、家事をした夫に文句を言ってしまう人も少なくないのでは。
水無田氏「文句を言いそうになったら、『嫁姑いびりの姑になってないかしら』って立ち止まって考えて。昔あった嫁姑問題は、今は夫婦間で起きている。家庭ごとに最適なところを見つけて、ダメ出しは『心の中の鬼姑が吠えていないか』と気を付けて」
大豆生田氏「大事なのは寛容さ。『これをやったら妻が喜ぶかな、楽になるかな』って、夫にその思いがあるならママは譲って」
子供に注意力を向けながら家事をしていると、中断することが多く、なかなか予定通りに進まずイライラしてしまいがちだ。
水無田氏「子供というコントロールがきかない相手がいたら、予定通り進まなくて当たり前。何とかやっている自分をまずはほめて。子供がいたら、"丁寧な暮らし"みたいな、クリーンな家事はできない。それを責めるのではなく、あきらめるのを前提にして。今の社会はあきらめるのを学ばせてくれない。子育て中の家事は一旦ダウンシフトする。完璧を求めることからは一時戦略的に撤退するのも手。子供とのコミュニケーションが大事なら、そのぶん他の家事は省力化していいと思う。何が家族にとって一番大切か考えて、そのために家の最適な時間の配分を夫婦で話し合うのが大事」