テレビや映画が健康に大きな影響を与える可能性を示唆する研究は多数存在する。テレビの見過ぎが過食や過体重につながるといったものや、ティーンエイジャーに誤った性知識を与える、アルコール摂取を推奨している、などの影響を懸念するものなどがそうだ。
では、性的表現や飲酒描写はなく、時間も限られている子供向け映画は、子どもに何らかの影響を与えるのか。米デューク大学の研究者らが、31本の映画を分析した結果を2017年12月1日に発表した。
野菜を食べるのは嫌なことでお菓子はご褒美
デューク大学のジョンナ・ハワード博士やアシュレイ・スキナー博士らのチームが注目したのは子どもの肥満だ。
現在発表されている世界保健機構の肥満データでは2~19歳の32%が過体重、17%が肥満とされおり、2025年までには2億6800万人の子どもが過体重・肥満になると予測されている。
子どもの体重増加にはさまざまな要因があるが、前述のようにメディアが健康に与える影響は少なくなく、子どもの肥満にも影響するような要素があるのではないかと考えたのだ。
そこで、2012~2015年に米国で公開された映画から、米国映画協会のデータベースに登録されている「P指定(全年齢視聴可能)」と「PG指定(保護者の同意のもと児童が視聴できる)」の子供向け(と思われる)映画31本を抽出。
1本の映画を10分ずつの動画データに分割し、その中で食生活や健康習慣に関係するような演出がなされているかを分析した。
その結果、ほとんどの映画で身体活動や栄養価の高い食品を摂取するといった行為は「嫌なもの」として描写されていることが確認されたという。
例えば、「Inside Out(邦題:インサイド・ヘッド)」ではブロッコリーを食べることを拒否した主人公の少女を父親は叱責し、少女は怒ってブロッコリーを投げ捨て、明確に「野菜を食べるのは嫌なこと」とされていた。
その一方で栄養価の乏しいスナックや糖分の多いお菓子類はポジティブな存在の象徴とされ、劇中では報酬やご褒美として描写されることが圧倒的に多かった。