携帯電話は「体から遠ざけて」 米州当局が「長年非公開」指針を開示したワケ

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記憶機能や脳腫瘍の発生、睡眠への影響認められず

 

   ガイドラインでは「子どもは悪影響のリスクが高まる可能性がある」とする。高周波エネルギーは、大人と比べて小さい子どもの脳の広範囲に届く。また成長期の10代にはその害が大きく、かつ長く続く可能性もあるという。さらに、大人になってから携帯電話の使用を開始した人と比べて、子どものころから使っていればそれだけ、使用期間は長くなる。「子どもや10代が携帯電話の高周波エネルギーの影響を受けるという研究は、多くはない」とあるが、聴覚障害や幻聴、頭痛、健康全般への影響を指摘した研究が存在するとも書かれている。

 

   実はガイドラインの内容はもともと2009年、CDPH内部で作成されていたが、長年非公開扱いだった。米カリフォルニア大学バークレー校のジョエル・モスコウィッツ教授がCDPHに対して資料の公開を求め、訴えを起こしていたのだ。公衆衛生学が専門で、携帯電話やタバコが人体に与える影響を研究している同教授は、自身のブログで12月16日に経緯を明かし、今年3月にカリフォルニア州サクラメント上級裁判所がCDPHに、資料を公開するよう命じる判決を下したと説明した。また米CBSのインタビューでは、「消費者に携帯を使うなと言っているわけではない。適切な注意を与えることで、(電波の)リスクを大幅に低減できるようにしてほしい」と語った。

   2015年5月にはコネチカット州の公衆衛生局が、今回のガイドラインと類似のものを発表している。一方 米政府機関である食品医薬品局(FDA)の見解は、「子どもや10代の若者を含むあらゆる人にとって、携帯電話の高周波エネルギーが危険だとの科学的な証拠はない」との立場をウェブサイトで明確にしている。それでも、電波にさらされるのを減らす方法として「携帯電話の使用時間を抑える」「スピーカーやヘッドセットを使い、顔と電話機が離れるようにする」という、カリフォルニア州のガイドラインと同じ内容が書かれている。高周波エネルギーと健康被害の因果関係は証明されていないと強調しているだけに、なぜこの記述があるのか分かりにくい。

   日本では総務省がサイト上で、「電波と安心な暮らし 知っておきたい身近な電波の知識」という資料(2016年5月改訂)を公開している。そこには健康リスクに関する説明もある。これまでの研究では、携帯電話端末などの電波について、記憶機能や脳腫瘍の発生、睡眠、血液脳関門などに及ぼす影響は認められないとの結果だった。ここから、「携帯電話基地局及び携帯電話からの電波が人体に影響を及ぼさないことを示している他、過去に影響があると報告された結果についても生物・医学/工学的な手法を改善した実験においては、いずれも影響がないという結果を得ている」とした報告書を、2007年4月に公表した。

   発がん性については国際がん研究機関(IARC)が2011年5月、携帯電話の使用について限定的な証拠があったとして、5段階中3番目の「発がん性があるかもしれない」に分類した。ただし総務省は、「携帯電話を使うとがんになるということではなく、その発がん性の可能性を完全に否定できないということ」で、IARCの「さらに研究を行うことが重要である」との姿勢を説明している。

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