難病のひとつ、「ハンチントン病」の治療につながる可能性がある薬品を特定し、臨床試験でも高い効果を上げていると、英ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのサラ・タブリツィ教授をはじめとする研究チームが、2017年12月11日に発表した。
この発表に、神経疾患分野の研究者たちからは「驚異的な前進」「過去50年間の神経変性疾患における最大のブレークスルー」といった声が挙がっている。
DNAのエラーが引き起こす難病
ハンチントン病は大脳の中心部にある神経細胞が徐々に変性、死亡していく「神経変性疾患」のひとつだ。脳細胞が減少していくため患者は徐々に運動能力や身体機能、記憶・思考能力が減退していき、発症から10~20年ほどで植物状態のようになり死に至る。
自らの意志に反して腕や足が動き、まるで踊っているようにみえる不随意運動(舞踏様運動)が特徴的な症状のひとつで、かつては「ハンチントン舞踏病」などとも呼ばれていた。
日本でも指定難病となっているが、難病情報センターのサイトでは「欧米では4~8人の患者がいるとされるが、日本では欧米の10分の1程度」「性差はあまりなく30代での発症が多い」とされている。
約140年前に発見された古い難病だが、現在に至るまで根本的な治療法は確立されておらず、患者の中には心理的な不安感からうつ病を発症する人もいるという。
発症原因は「ハンチンチン(HTT)遺伝子」というDNAのエラーであることがわかっている。
本来は脳細胞に必要な「ハンチンチンたんぱく質」を作るはずのHTT遺伝子が、エラーによって脳細胞を破壊する変異性ハンチンチンたんぱく質を作り出してしまうようになるのだ。
タブリツィ教授らはこのエラーHTT遺伝子が変異たんぱく質を産生する指示を出せないようにする成分を探索し続けており、2015年には動物実験で「IONIS-HTTRx」という薬品が有効であることを確認。
同年に英、独、カナダにある9つの病院で治療を続けている初期のハンチントン病患者46人を対象に、臨床試験を開始した。