唐突に導入が決まっていった経緯
そもそも、国民の負担増を極力回避するために、歳出削減で財源をねん出するのが本来の行政の在り方で、実際に、各省の予算は、新しい施策のためには別の不要不急の予算を削って財源を確保する「スクラップ・アンド・ビルド」が大原則だ。新税で負担を求めるのには、極めて慎重であるべきだ。
しかも、この新税は悪名高い「特定財源」、つまり、特定の目的にだけ使う税金で、税収を使い切ろうとして、無駄遣いになる懸念がある。かつて、ガソリン税は道路特定財源だったが、無駄な道路を造り続ける温床と批判されただけでなく、関係する役所の福利厚生のためとしてカラオケセット購入や職場旅行などにまで使われたことも発覚し、09年度から一般財源化されたのは、記憶に新しい。
このため、全国紙の社説(産経は「主張」)は、一様に批判的だ。
出国税には、日経(10月1日)が「『観光立国』をめざし、日本経済の活性化につなげようという発想は理解できる」、産経(11月11日)も「訪日客に対して一定の負担を求める方向性は理解できる」と、一定の理解を示すが、「観光庁の有識者会議の報告書には、『あらかじめ使途を限定しすぎることは適切ではなく、ある程度幅広く対応できるようにすべきだ』とある。こういう施策にいくらかかるから新税しかない、という論理ではない」(毎日12月10日)など、必要額を積み上げた結果、財源が足りないから新税を設けるという手順を踏んでいないとの批判は、各紙に共通し、産経が「肝心の新税の使途が明確ではない」と疑問視、日経も「(観光振興の)手段として出国税が妥当かどうか。冷静に検討する必要がある」とくぎをさす。
唐突に導入が決まっていった経緯にも「新税ともなれば、目的と使い道、負担の程度と影響などについて十分に検討が要る。その上で、国民への説明を尽くさなければ、幅広い理解は得られまい」(読売11月15日)、「有識者会議は非公開で、審議内容は配布資料や報道関係者への事後説明で概要がわかる程度だ。千円以内とする徴収額については、会議を開かず、観光庁が委員らと水面下で調整して固めた。こんな透明性を欠くやり方で、幅広い理解を得られるだろうか」(朝日11月10日)と、疑問符を突き付ける。
さらに、懸念が大きいのは「特定財源」であること。「最大の問題は、無駄遣いを防ぐ手立てが見えないことだ。......特定財源のような手法は負担と受益の関係が見えやすい半面、特定省庁の既得権益となり、無駄な予算を生みやすいという弊害がある」(朝日)、「必要な経費だというなら、税収を使途の特定がない一般財源に入れたうえで、別途、予算要求すればよい」(毎日)、「特定財源とはせず、一般財源として財政健全化にも活用できるようにすべきだ」(日経)、「財源を使い切ることが政策展開の前提になっていけば、バラマキに陥らないか」(読売)など、そろって批判的な書きぶりだ。