兄弟が多いほど同性愛者になりやすい謎 胎児の時に母体から受ける「影響」に秘密

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   男性の同性愛者は、上に兄弟が多い人ほどなりやすいことが以前から指摘されていた。これは女性の同性愛者には見られない「兄弟効果の謎」といわれてきた。

   カナダ・ブルック大学の研究チームが、母親の胎内にいる時に母体から影響を受けたためという研究を米国最大の科学団体機関誌「米国科学アカデミー紀要」(電子版)の2017年11月22日号に発表した。いったい、どういうことか。

  • 胎児の時に母親から影響を受けていた?
    胎児の時に母親から影響を受けていた?
  • 胎児の時に母親から影響を受けていた?

兄が1人増えるたびに1.3倍ずつ同性愛傾向が高く

   男性同性愛者はどのくらいの割合でいるのだろうか。電通ダイバーシティ・ラボが2015年4月に発表した「LGBT2015調査」という報告がある。「LGBT」は「レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー」の略で、性的マイノリティーの人々だ。20~59歳の男女6万9989人に性的志向を質問した結果、LGBTの人が全体の7.6%いることがわかった。

   約13人に1人で、この割合は「左利きの人」や「AB型の血液型の人」とほぼ同じ割合だという。LGBTの人の中で、ゲイ(男性同性愛者)は38%だ。全部の男性に占める割合は5.8%で、約17人に1人ということになる。

   今回の研究の中心になったカナダ・ブロック大学のトニー・ボガード教授は、国際的に知られたセクシャリティーの専門家だという。米国立科学アカデミー紀要に載った論文によると、20年ほど前に別の研究から、「兄が多い男性ほど同性愛者になりやすい」という報告が発表され、「兄弟効果」と呼ばれるようになった。例えば、兄が1人増えるごとに同性愛の確率が1.3倍ずつ増えるという報告もある。そこから、遺伝的要素が関係しているのではないかという研究がいくつか発表されたが、明確に理由を説明した研究はなかった。

   ボガード教授は、「兄弟効果の謎は遺伝で解けるのではなく、母親の胎内にいた時に母体の影響を受けるからではないか」と考えた。そして、10年以上研究を続けた結果、母親の胎内で作られるある抗体が、胎児の性的志向に影響を与えることを突きとめた。

母親は男の胎児をアレルギーのように「異物」と認識?

   その仮説を立証するために、142人の女性と12人の男性の血液を採取した。女性たちは「息子がいない女性」「異性愛者の息子の母親」「同性愛者のひとり息子の母親」「兄弟がいる同性愛者の息子の母親」などだ。また、男性は異性愛者と同性愛者だ。そして、「NLGN4Y」というタンパク質の血中濃度を比較した。すると、同性愛の男性と、下の息子が同性愛者である母親に「NLGN4Y」が多いことを突きとめた。つまり、「NLGN4Y」が男性を将来、同性愛者にするカギを握っていたわけだ。

   「NLGN4Y」とはどういうタンパク質で、どういう働きをするのか。ヒトの染色体はX染色体とY染色体の2種類があり、女性は「XX」、男性は「XY」だ。ボガード教授の説によると、「NLGN4Y」は男性だけが持つ「Y染色体」に関係するタンパク質だ。母親は1人目の男児を妊娠すると、「Y染色体」を持っていないため、男児を「異物」と認識するという。そのため、「NLGN4Y」を攻撃する抗体を作り出す。よく花粉症や食物アレルギーの人が、アレルギー源に対して免疫機構が過剰に反応し、抗体と作り出すのと同じ仕組みだ。そのアレルギー源にあたるのが「NLGN4Y」なのだ。

   そして、母親が二番目、三番目の男児を妊娠するたびに抗体が増え、胎盤を通して胎児の脳に達して性的志向に影響を与えるという。

   ボガード教授は論文の中でこう語っている。

「少なくとも男性の同性愛は本人の選択ではなく、生得的なものであるという考えを固めることに役立つ研究だと思います。兄弟効果の謎は、遺伝だけでは説明できません。母親の胎内のホルモンや抗体によって胎児の脳の発達を変化させた可能性が高いと考えます」
姉妹サイト