「紙巻きタバコに比べると健康被害が少ない」として、電子タバコがブームになっている。中には、紙巻きタバコの喫煙者が電子タバコに切り替えることで、禁煙につながると推奨する意見まである。
そんな論調にトドメを与えそうな研究が米医学誌「The American Journal of Medicine」(電子版)2017年12月号に発表された。若者が電子タバコを吸い始めると、1年半後には半数が紙巻きタバコに移行するというのだ。
電子タバコが紙巻きタバコの呼び水になる危険度は7倍
同誌の論文要旨によると、研究を行なったのは米ピッツバーグ大学医学部の医師らのチームだ。米国でも、電子タバコは紙巻タバコより比較的安全なので、喫煙者の禁煙に役立つと推奨する動きがある一方、喫煙経験がない若者が電子タバコを吸い始めると、紙巻きタバコに導くのではないかと危惧する見方もあった。そこで、医師らはこの問題を確かめるために、今回の調査を行った。
研究チームは、全米の人種・階層・地域を代表し、なおかつ紙巻きタバコの喫煙経験がない18~30歳の男女1506人を対象に選び、1年半後の喫煙の有無を調べた。そして、電子タバコの使用者と非使用者との間で紙巻きタバコの喫煙開始率を比較した。
その結果は次の通りだった。
(1)電子タバコを吸っていない人で1年半後に紙巻きタバコの喫煙者になっていたのは10.2%だったが、電子タバコの使用者では47.7%にも上った。半数が電子タバコから紙巻きタバコに移行したわけだ。
(2)このため、電子タバコの使用による紙巻きタバコの喫煙開始のリスクは、電子タバコを使用しない場合に比べ6.8倍になる。
研究チームのブライアン・プリック医師らは、論文要旨の結論でこうコメントしている。
「電子タバコが紙巻きタバコの吸引を誘発する大きな要因であることが明確に示されました。若者が電子タバコを吸わないように支援する行政の政策と教育が必要です」
電子タバコについては、日本呼吸器学会も2017年10月31日、「紙巻タバコより健康被害が少ないという説があるが、推測にすぎない。健康に悪影響をもたらすため、使用は推奨できない」とする見解を発表している。