生理が始まる1~2週間前から起こるイライラ、腹痛、頭痛などの不快な症状。「月経前症候群」(PMS)が女性アスリートたちの大きな悩みだが、PMSになりやすい人は、女性ホルモンに似た働きをする「エクオール」を体内で作ることができない体質の人に多いことがわかった。
近畿大学東洋医学研究所と大塚製薬の研究チームが、同大の女性アスリートを調査し、産婦人科専門誌「Journal of Obstetrics and Gynaecology Research」(電子版)の2017年12月8日号に発表した。
日本人の6割は大豆の「女性ホルモン効果」がない
近畿大学の発表資料によると、エクオールは大豆イソフラボンから作られる活性物質だ。大豆イソフラボンが体内に吸収されると、腸内細菌の働きによって、エクオールが生まれる。しかし、それには特定の腸内細菌が必要で、日本人は腸内細菌のタイプから作ることができない人が非常に多い。これまでの研究では、日本人の閉経前の女性のうち58%が作ることができないことが分かっている。つまり、できないタイプの人は、大豆を食べても「女性ホルモン効果」が期待できないわけだ。
また、別の研究でも、エクオールが女性ホルモンと同じ働きをするため、エクオールを作ることができない人は、PMSや更年期障害、骨粗しょう症、心臓病など女性ホルモンの乱れが原因の1つとなる病気になりやすいことも分かっている。
研究チームは、近畿大学体育会クラブ所属の女性アスリート88人の協力を得て、PMS症状がひどく運動パフォーマンスに障害が出ているかどうかアンケート調査した。選手たちのうち73人(83%)が、国際大会や全国大会に出場経験がある競技レベルの高い人だ。そして、選手たちがエクオールを作ることができる体質かどうかを「大豆負荷検査」という方法でテストした。
エクオールを作れない選手はPMSのリスクが3.3倍
その結果、エクオールを作ることができる人は26人(29.5%)だけで、一般の10~20代女性の比率(20.6%)とほぼ同じ低い結果となった。また、48人(54.5%)がPMS症状によるパフォーマンス障害があると答えた。こうした結果から、エクオールを作ることができない選手は、作ることができる選手に比べ、PMS症状によるパフォーマンス障害のリスクが約3.3倍も高くなった。
今回の結果について、研究チームは発表資料の中で「体内でエクオールを作ることができるかどうかが、競技に悪影響を与えるほどのPMS症状に関係していることがわかりました。エクオールを作ることができない選手には、(サプリなどで)エクオールの摂取を行なうことの重要性が示されたと考えています」とコメントしている。