中国に生息する最大の「灰色のサイ」 北京で起きた「事件」が意味すること

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   北京市大興区西紅門鎮で2017年11月18日に発生した火事で、19人が死亡、8人が重傷を負ったことは日本でも大きく報道された。一方、「北京市朝陽区にある紅黄藍新天地幼稚園の児童が幼稚園教諭から針を刺され、正体不明の錠剤を飲まされるなどの虐待を受けている」というニュースも、日本ではあまり報道されていないが、現地では大きな反響を呼んだ。

   実は、この二つの事件をめぐる中国当局の動きとネットでの反応が、中国における新たな「灰色のサイ」の存在をクローズアップさせている。「灰色のサイ」は主に経済分野における隠れた脅威を象徴する言葉だったが、にわかに社会的な意味を持ち始めたのだ。

  • 2017年11月19日付の「北京晩報」
    2017年11月19日付の「北京晩報」
  • 2017年11月19日付の「北京晩報」

出稼ぎ労働者の強制排除の実態

   大興区での火事の後、北京市の関係部門は北京全土の同じような区画のアパートや借家から住民の即時退去の命令を出した。

「即時退去。期限は5日間」
「11月26日に電気・ガス・水道を強制的に止める。住民全員はこの期日の前に全て退去すること」
「期日が来ても退去しない者は強制的な処置を取り、いかなる結果となっても責任は自分で持つ」

   政府の通達や行政機関の行動は、この季節の気温よりもずっと冷たいものであった。

   即時退去の命令を受けた多くの出稼ぎ労働者は引っ越し先を探す間もなく、汽車のチケットを買って慌ただしく故郷に帰るしかなく、また荷物や子どもを抱えて寒風吹き荒ぶ橋の下で野宿する者も少なくなかった。その写真がネット上にアップロードされると、全国の国民が彼らに深い同情を寄せた。

   北京の中国共産党の機関紙は「『人民の安全が何よりも大事』『生命至上、安全第一』が守るべきラインである」と紙面を飾ったが、ネット上では主に「『生命至上、安全第一』という言葉には出稼ぎ労働者の生命や安全は含まれていないのか」「北京の人口二千数百万人のうち北京戸籍を持っているのは1200万人しかいない、残りの1000万人以上は人民ではないのか」という疑問の声が流れている。

   しかし、退去者の悲惨な境遇を報道するメディアもなければ、北京市政府を批判するメディアもゼロに等しく、この件についてメディアがオープンに論じた記事はいつも即座にブロックされる。

   200人余りの知識人がネット上に連名の公開書簡を発表し、北京市政府に退去の中止を求めたが、それもすぐに削除されてしまった。

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