近年深刻化する大気汚染の原因となっている微小粒子状物質「PM2.5」について、人体への悪影響がまたひとつ指摘された。
ユニセフは最新の報告書のなかで、乳児の体内にPM2.5が入り脳に到達すると、脳を損傷する恐れがあるとしている。
「脳血管壁を破壊し、脳細胞の炎症を起こし得る」
ユニセフが2017年12月6日に発表した報告書「大気汚染の危険:子どもの脳の発達に及ぼす影響」では、1歳未満の乳児がPM2.5を吸い込むことで、発達途上の肺だけでなく脳も害すると指摘している。PM2.5は極めて小さいため、「血管を通って脳に到達し、脳血管壁を破壊し、脳細胞の炎症を起こし得る」というのだ。
そのうち、例えば非常に小さい磁鉄鉱は体内に入ると、神経変性疾患を起こすことで知られる酸化的ストレスを発生する可能性がある。また、脳のなかで子どもの学習と発達の基礎となる部分を破壊し得る「多環芳香族炭化水素」というものもある。幼い子どもは大人と比べて、少量のPM2.5で脳が害を受けやすいと、報告書は説明している。
WHO(世界保健機関)では、PM2.5の年平均値を1立方メートル当たり10マイクログラムと定めている。この値を6倍上回る地域が、南アジアや東アジア・太平洋地域に多く、合わせて1650万人の乳児が暮らしていると説明している。
PM2.5の年平均値、日平均値は国や機関によって若干違う。年平均値で最も基準が厳しいのはWHOで、これに米国の1立方メートル当たり12マイクログラム、日本の同15マイクログラム、EU(欧州連合)の同20マイクログラムと続く。日平均値は、WHOが同25マイクログラム、日本は同35マイクログラムだ。
環境省の「PM2.5モニタリングデータ(海外)」を見てみた。中国と韓国の8か所で、データをとっている。過去30日間の日平均値を見ると、濃度の値が最も高かった日は、北京で同168.1マイクログラム(12月2日)、上海で同568.5マイクログラム(12月10日)、四川省成都では同123.2マイクログラム(11月28日)と、3けたを超える都市が複数確認された。