CD買わない若者が「ラジカセ」を買う理由 レトロ趣味超えた、新たな需要が

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   「カセットって知ってる?」と後輩記者(1994年生まれ)に聞いてみた。

「カセット......? フロッピーみたいなヤツですか」
「それはMDだと思う」
「MDとカセットって違うんですか」

   無理もない。MDの普及が進んだ2000年ごろ、まだ彼は小学校に入るか入らないか。20代前半より下の世代は、カセットやその再生機器の「ラジカセ」など、触ったこともないはずだ。

   ところがそんな若者に、今「ラジカセ」が売れているという。

  • ドウシシャが「SANSUI」で販売中の「SCR-B2」。なお「SANSUI」は、かつて山水電気(2014年破産)が展開したオーディオブランド。2012年からドウシシャが使用中
    ドウシシャが「SANSUI」で販売中の「SCR-B2」。なお「SANSUI」は、かつて山水電気(2014年破産)が展開したオーディオブランド。2012年からドウシシャが使用中
  • ソニーの「CFD-S401」。カラーはウェブ限定の「ブルーグレー」
    ソニーの「CFD-S401」。カラーはウェブ限定の「ブルーグレー」
  • ドウシシャが「SANSUI」で販売中の「SCR-B2」。なお「SANSUI」は、かつて山水電気(2014年破産)が展開したオーディオブランド。2012年からドウシシャが使用中
  • ソニーの「CFD-S401」。カラーはウェブ限定の「ブルーグレー」

見た目は80年代、中身は2017年モデル

   「ヤバい!これほしい!」「欲しい、クリスマスに買って欲しい」――そんなツイートが続出したのは、「SANSUI(サンスイ)」ブランドでドウシシャ(大阪市)が2017年9月に発売したラジカセ「SCR-B2」だ。

   角ばったメタリックなボディー。所狭しと備え付けられたスイッチやダイヤル。左右の円形のスピーカー。まさに、1980年代にタイムスリップしたようなデザインだ。

「1月の展示会に試作品を出品したところ、参加した小売業界の方々からたいへん好評をいただきまして......『このデザインが、新商品なの!?』と」

   そう笑うのは、ドウシシャの担当者である。

   デザインは80年代だが、中身はちゃんと2017年モデルだ。Bluetoothを搭載し、スマートフォンなどと接続して音楽などを流せるのをはじめ、SDカードやUSBメモリの再生にも対応する。また、これらの音源をカセットに録音することも可能だ。

   あるユーザーが11月23日、売り場で見かけたこの「ラジカセ」をツイッターに投稿したところ、一気に話題に火が点き、12月12日までに7600回以上もリツイートされている。

メーカーはなぜ若い世代を狙ったか

   デジタル配信の普及などを背景に、「CDが売れなくなった」といわれて久しい。日本レコード協会の統計によれば、2016年の総生産枚数は約1億6000万枚で、10年間で40%近くも下落した。

   そんな中で、カセットやラジカセの評価が高まりつつある。2017年8月には、東京・西武渋谷店で、懐かしのラジカセ100台超を集めた「大ラジカセ展」が開催された。多くのメディアで取り上げられ、連日多くの来場者があった。

   かつてラジカセを愛用していた世代だけではなく、「昔の『ひと手間加えた』文化の良さ」を評価する、20代の若い層も多く訪れたと西武渋谷店の広報担当者は語る。アイドルグループのでんぱ組.incや女優ののんさんなど、人気アーティストがカセットを限定盤としてリリースするケースも増えた。

   ドウシシャがターゲットにするのは、こうした若い世代だ。

   上記のようなカセットでのリリースが増えていることもあり、「若い人――『カセットを知らない世代』にも、カセットに触れる機会が増えています」(担当者)。ところが、いざ聞こうと思っても多くの家庭には、再生できる機器がない。一方、現在販売されている「ラジカセ」は、高齢のユーザーをターゲットにしたものが多く、若い世代としてはピンと来にくい。

   そこであえて、1980年代風の「当時を知る人なら懐かしく、若い人から見れば『今までにない』」デザインを採用、またカセット再生以外での利用も想定し、スマホなど若い世代が使うデバイスではすでに標準機能となったBluetoothを搭載した。担当者は、商品のコンセプトを「若い人がほしい、と思うようなラジカセ」だと語る。

   そうした意味では「Bluetoothに対応したラジカセ」というよりは、「カセットに対応したBluetoothスピーカー」とも言えるかもしれない。実際、小売店にもラジカセではなく、Bluetoothスピーカーの売り場に並べてもらうよう頼んでいるという。

   見込みは当たり、9月の発売以来、購入者も若い世代が中心だ。実売9980円前後(オープンプライス)という価格帯もあり、「好きなアーティストの『カセット』を買ったのを機に、衝動買いしてくれる人も多いです」。

ソニーは「ラジカセのある風景を変える」新商品

   もちろん、昔から「ラジカセ」を愛用し続けている層も。「実はラジカセは、業界的にも堅調なカテゴリなんです」と説明するのは、ソニーの広報担当者だ。

   ドウシシャとは違い、ソニーが主に想定しているのは、これまでもラジカセを使い続けてきた50~60代の買い替え需要だ。しかし、商品は着実に変化している。たとえば、6月に発売した最新モデル「CFD-S401」(ソニーストア価格:1万2880円)は、「ラジカセ」と聞いて思い浮かべる(それこそドウシシャ製品のような)ものとはかなり異なる、落ち着いた色使いと、やわらかみのあるデザインが印象的だ。

「これまでは『メカっぽい』デザインが主流でしたが、『ラジカセのある風景を変える』ことをコンセプトに、昨今のインテリアのトレンドに合うような、落ち着いたトーンを取り入れました」

   そのソニーも、ニーズが世代を超えて広がりつつあることも実感している。「CFD-S401」の発売のニュースもメディアで盛んに取り上げられ、商品ページにはこれまでより多くのアクセス数があった。こうした動きを受け、「カラーやデザインを重視する40~50代以下」を主なターゲットに、ウェブ限定カラーの「ブルーグレー」を9月に投入している。

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