ハエが室内を飛んでいると、余りいい気はしないだろう。小ぶりなコバエでも、食べ物の周りなどを飛び回っていると食欲もなくなってくる。
気分の問題だけではなく、ハエは腐敗した物質や糞便などからたんぱく質を摂取しており、有害な細菌に触れている可能性も高く多くの病気の原因を抱えており、衛生的にも好ましいとは言えない存在だ。
そんなハエが実際にどのような細菌を運んでいるのか、ブラジル・リオデジャネイロ連邦大学のアナ・カロリーナ・ジュンケイラ教授をはじめとする国際研究チームが分析を行ったところ、興味深い細菌が確認されたと2017年11月24日に発表された。
ハエは数百種類の細菌を持っている
研究チームがハエを採取したのは豪州、ブラジル、米国、シンガポールの4地域だ。イエバエの生息地は多岐に渡るため、採取地も食品市場や公立病院、公共の公園、ごみ埋め立て地、アマゾン熱帯雨林の保護区から各地の動物園まで、バラエティー豊かになっている。
採取されたハエはイエバエ53匹、クロバエ62匹、比較用に用いた無菌状態で飼育されたイエバエ1匹の計116匹。
採取時に新たに別の細菌に汚染される可能性を抑えるため、付着している細菌が判明している腐敗した魚を用意し、そこに近づいたハエを捕獲するとすぐにドライアイスの入った容器へと入れ、そのまま研究室まで運び込んでいる。
そして、解凍後は頭部や胸部、腹部、足などに分け粉砕し、DNAを抽出。収集されたDNA配列をひとつずつ細かく分析していき、それぞれの部位に存在する細菌の種類を特定していった。
その結果、数百種類の細菌が確認され、そのうち33種類は人体にとって有害な病原体としても機能するものであることがわかった。
では、中でも最も多く確認された細菌はなんだったのだろうか。なんと、胃がんや消化器系の潰瘍、リンパ腫などを引き起こす「ヘリコバクター・ピロリ」、俗にいうピロリ菌だったのだ。
ピロリ菌は感染者の体液が付着するなどして感染することは知られていたが、ハエが媒介している可能性を示す結果が出たのは今回が初めてで、ジュンケイラ教授も「驚きを隠せない」とコメントしている。
今回はあくまでもハエにピロリ菌が付着していることが確認されただけで、ハエが食品に触れるなどしてそこからピロリ菌に感染するかまでは不明だが、もしそうであるならばこれまで見落とされていた意外な感染ルートが判明したことになる。