コーヒーの健康効果を示唆する研究論文は近年多数発表されており、もはや「健康飲料」のイメージすらある。しかし、本当にコーヒーを飲むことが健康に寄与するのかを検証している論文はあまりなく、健康へのベネフィットはあまりはっきりしていない。
そんな中、英サウサンプトン大学とエジンバラ大学の研究者らはコーヒーによるさまざまな健康効果を検証した論文59件を解析。コーヒーが健康に与えるリスクとベネフィットの分析結果を2017年11月22日に発表した。
肯定的な結果を示す研究が多い
今回の分析のきっかけは、サウサンプトン大学とエジンバラ大学の両大学が共同で肝臓疾患に対するコーヒーの治療効果を検証する研究を行うにあたり、コーヒーが健康に与える研究をレビューし、コーヒーが有益か有害かどうかを確認したいと考えたためだ。
しかし、研究の中には研究方法の質が低いもの、研究者が特定の企業の関係者であったり資金提供を受けている場合など、さまざまな論文が存在する。
そこで、研究者らは研究における分析方法(今回の場合、どれだけ厳密にコーヒーが健康に影響しているか)の質を評価する「AMSTAR」という評価法と、研究から導き出された証拠がどの程度確実かを評価する「GRADE」という評価法、ふたつの評価法で論文の質も分析。
質の高い論文の結果ほどより確実なものであると仮定し、59件の論文をレビューしている。
その結果、19件の論文はコーヒーの健康効果を、6件の論文はコーヒーの有害な影響を示したが、残りの34件ではコーヒーの消費量に差がなさすぎるため、「(コーヒーをよく飲む人が何らかの健康効果を得るという結果は)偶然の域を出ない」とされた。
具体的な健康効果は、1日3~4杯のコーヒーを飲む人はそうでない人に比べ、
・死亡リスクが10%低下
・心臓発作や脳卒中の発症リスクが10%低下
・一部のがんリスクが18%低下
・アルコール性肝脂肪率が29%低下
・2型糖尿病発症リスクが30%低下
となっている。また、有害な影響としては「妊婦が引用した場合の流産・早産リスク」「白血病リスクの上昇」「肺がん発症率の上昇」「慢性関節リウマチのリスク上昇」「女性のみ骨折リスクの上昇」などが挙げられている。
これらの結果から、研究者らはコーヒーの消費は「一般的には安全」と見なせるとし、
「明らかに有害と思われる妊婦の引用例を除き、害よりも健康に有益である可能性は高い」
とコメントした。
「健康のためにコーヒーを飲む必要はない」
やっぱりコーヒーは健康飲料だったと言いたいところだが、実は結論はそうではないのだ。
まず、研究者らによるとほぼすべての論文で「GRADE」の評価は「低品質」もしくは「とても低品質」とされており、コーヒー消費と健康成果の関連性の多くは、交絡因子(コーヒー以外の影響を与える要因)によって大きな影響を受けているとされている。また、肯定的な結果が得られた研究のみが公開されている可能性(出版バイアス)を示す証拠もいくつか見つかっており、
「コーヒーを飲む習慣自体は良いかもしれないが、健康のためにコーヒーを飲む必要はないという結論になる」
とも指摘している。
今回の論文が掲載された英国医師会誌も付随論文(専門誌としての解説)を発表しており、その中で、
「医師が病気を防ぐためにコーヒーを飲むよう勧めるでしょうか? 我々は健康上の理由からコーヒーを多めに飲むべきでしょうか? 両方の質問に対する答えは『いいえ』です」
と断言している。コーヒー党の人がコーヒーをやめる必要はないが、紅茶党や日本茶党だった人が、わざわざコーヒーに乗り換える必要はなさそうだ。