北朝鮮による拉致被害者・曽我ひとみさんの夫で、元米軍軍人のチャールズ・ジェンキンスさんが2017年12月11日、亡くなった。NHKなど各メディアが報じている。77歳。
曽我さん帰国後の2004年に来日し、以後は曽我さんの故郷でもある新潟県佐渡市で暮らしていた。その来日は大きなニュースになり、本人のあずかり知らぬところで、プロ野球チームの名前の候補に挙げられるという珍騒動もあった。
2004年に来日、大きな話題に
米陸軍軍曹として韓国に駐留していた1965年に脱走、以後39年にわたり北朝鮮で生活した。その間、日本から拉致された曽我さんと結婚、2人の娘をもうけた。曽我さんが2002年、日朝首脳会談を経て帰国を果たすと、ジェンキンスさんも04年7月に娘たちとともに来日、日本人以外の拉致被害者の存在を証言するなど、「拉致が国際的な問題となる1つのきっかけ」(NHK)を作ったと評価されている。日本では曽我さんとともに暮らし、地元の観光施設などで働いていたが、報道によれば11日に体調が急変したという。
04年の来日は大きなニュースとなり、連日テレビなどでもその動静が報じられた。ネット上でもその名前が広まった結果、思わぬ出来事が。ほぼ同時期に巻き起こったプロ野球再編問題の中で、ライブドア社長(当時)の堀江貴文氏が参入計画を発表、そのチーム名をネットで一般募集した。当時のスポーツ報知記事(2004年10月2日付)にはこうある。
「IT企業の特色を生かしたアイデアが裏目に出た。インターネット上で公表されたランキングに表示された新球団名は『仙台ドアーズ』といったまともな名前がある一方で、(中略)北朝鮮拉致被害者の曽我さんの夫ジェンキンスさんの名前を使った『仙台ジェンキンス』などが登場した」
なんと、当人のまったく関係ないところでプロ野球チームの名前にされかかってしまったのである。
ほか「したらばメンテナンス」など
この投票はほかにも「仙台ギャラクシーエンジェルズ(当時放映されていたアニメから)」「したらばメンテナンス(ライブドアが当時運営していた掲示板サービス『したらば』から。メンテナンスの頻発を揶揄されていた)」「浦和レッズ」「楽天」など、悪ふざけじみた名前が大量に寄せられた。
こうした中でも「仙台ジェンキンス」の語呂の良さは人気があり、投票では上位を占め続けた。当然ながら、これらの候補は間もなく削除され、また新規参入枠も楽天に決まったため、「仙台ジェンキンス」は幻に終わった。
ツイッターには訃報を受け、この騒動を思い出した人も多く、
「10数年前にライブドアの球団名公募で、『仙台ジェンキンス』が1位になったというのもありましたね。合掌」
「不謹慎だけどパッと思い出したのが仙台ジェンキンスとジェンキン寿司(※編注:やはり当時流行った『ジェンキンス氏』と引っ掛けたダジャレ)ネタ」
「ライブドアが球団持ってたら仙台ジェンキンスだったかもしれなかったんだよな」
なお2005年ごろ、実際に「仙台ジェンキンス」を名乗るフットサルチームが仙台市に存在し、地元の大会で優勝するなど活躍したという(河北新報、2005年3月7日付朝刊)。