原発再稼働めぐり「推奨」VS「論外」 温暖化対策会議と新聞論調

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   地球温暖化対策を協議する国際会議、国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)が2017年11月にドイツのボンで開かれ、20年以降の国際枠組み「パリ協定」の運用ルールづくりの交渉加速などを確認した。

   トランプ米大統領のパリ協定離脱宣言(6月1日)を受けての会議だったが、ひとまず、「米国抜き」の取り組みの方向性を確認できたことは、前向きに評価されている。ただ、実効性のある合意への道筋はなお険しい。日本は石炭火力発電を重視する姿勢が国際的に批判され、議論を主導するにはほど遠い状況だ。

  • 原発再稼働をめぐっては意見が割れる(画像はイメージ)
    原発再稼働をめぐっては意見が割れる(画像はイメージ)
  • 原発再稼働をめぐっては意見が割れる(画像はイメージ)

重要テーマは「途上国への資金支援」「温室効果ガス削減目標の上積み」

   パリ協定は1997年に採択された京都議定書の後を継ぐ国際的枠組みとして2015年12月、パリで開いた第21回締約国会議(COP21)で採択され、当時の米オバマ政権の積極姿勢に引っ張られ、わずか1年で発効した。各国が、削減目標を作成して提出するという目標を積み上げる方式で、目標の達成自体は義務とはされていないのが、京都議定書と大きく異なる。その代り、削減義務のなかった途上国も削減目標を掲げるとし、先進国は途上国へ資金支援を行う。

   パリ協定の細かい運用ルールは2018年12月にポーランドで開くCOP24で採択する。今回のCOP23は、その前段の調整という位置づけ。具体的重要テーマは、途上国への資金支援、温室効果ガス削減目標の上積みの2点。資金支援では、先進国と途上国が引き続き対立し、会期を延長して交渉が続けられた。米国の脱退宣言で、途上国には十分な資金支援が続くのかという不安があり、交渉は来18年に積み残した。

   一方、目標上積みでは前進もあった。パリ協定が目指す「世界の平均気温上昇を2度以内に抑える」は、現状の各国の目標を実行しても達成困難とされている。そこで、2018年に「タラノア対話」実施を決めた。その中身は、(1)現在の温室効果ガス排出量の確認、(2)パリ協定に向け提出した2020年以降の排出削減目標がその国・地域にとって十分か検証、(3)削減の方法が適切かどうかを検討―の3点で、こうした取り組み状況の「検証作業」などを通じ、実質的に削減目標の上積みにつなげようというのだ。

   日本はというと、2030年度までに、温室効果ガスを13年度比26%削減する目標を表明済みで、これとて相当高い目標だが、今後の議論で上積みを迫られるのが確実だ。

日本は化石燃料回帰を鮮明にするトランプ政権と同一グループ?

   他方、日本は石炭火力への姿勢で国際的に批判を受ける。石炭火力としては効率がいい技術を持ち、東日本大震災後に石炭火力の新設が相次ぐのに加え、途上国への輸出にも熱心で、安倍政権は成長戦略の一環と位置づける。今回のCOP23の間も、会議終盤に英国とカナダが呼びかけで脱石炭火力のための国家連合が、20か国と米オレゴン州などの地方政府の参加で発足したが、こうした国々からは、日本は化石燃料回帰を鮮明にするトランプ政権と同一グループと見なされつつある。COP23で日本政府は記者会見を開かず、中川雅治環境相が会議に出席しながら海外メディアとほとんど接しなかったのも、石炭火力への姿勢を問い質されるのを嫌ったからといわれている。

   COP23をどう評価するか、そして日本は今後、どのように温暖化に向き合っていくのか。主要紙の社説(産経は「主張」)をみると、基本的に会議の成果を評価する点で、各紙、一致している。

「トランプ米政権がパリ協定からの離脱を表明後初めてのCOPだったが、各国が協調して温暖化対策に臨む姿勢は保たれたと言えよう」(毎日11月21日)
「パリ協定の下で、各国の結束が維持されたことが、COP23の最大の成果だったと言えよう」(読売19日)
「先送りした課題もあるが、温暖化対策の着実な実施へあらためて結束を確認できた意義は大きい」(日経21日)
「地球温暖化対策は加速傾向を強めている。......世界第2の排出国である米国が協定脱退の姿勢を改めないことに伴う、各国の危機感が反映された結果といえよう」(産経21日)
「パリ協定の運用ルール作りを加速させ、また一歩、脱炭素に近づいた」(東京21日)

   トランプ政権への批判を中心に書いた朝日(21日)も「全体としては、すでに170カ国が締結済みのパリ協定が推進力を失うことはなかった」と書いた。

   COP23で議論をリードできなかった日本に対する論調は概して厳しい。

高効率の石炭火力発電技術を輸出

   COP23開幕当日に発表された「日米戦略エネルギー・パートナーシップ(JUSEP)」では、原子力や石炭火力の推進を謳い、同じ日の日米首脳会談で、米国と協力して東南アジアやアフリカに高効率の石炭火力発電技術を輸出する方針で一致したのは象徴的な動きだった。こうした状況を踏まえ、東京が「石炭火力はたとえ高効率のものであっても、天然ガスの二倍の二酸化炭素(CO2)が出てしまう」と指摘し、毎日は「脱石炭に向かう世界の潮流を読み違えれば、国際協調に反すると見なされかねない。途上国支援すら、評価されなくなる事態が生じる恐れもあるのではないか」、朝日は「国際社会からは、米政権ほどではないが、ガスの排出削減に消極的な国だとみられている。長期の削減戦略をいまだに示していないうえ、途上国への石炭火力発電の輸出を続けようとしているからだ。......米政権の動きを追うばかりでは孤立しかねない」と、そろって危惧の念を表明。日経も「日本は原発の再稼働が限られ、電力を石炭火力で補わざるを得ない事情はある。長い目で脱石炭を進めるにはどんな方法があるかも検討すべきだ」と、慎重な対応の必要を指摘している。

   各紙の論調が大きく分かれるのが、やはり原発の扱いだ。原発肯定の3紙では、日経が「新たな目標の検討に必要な温暖化対策の長期戦略は定まっていない。火力、原子力、太陽光などの最適な電源構成(ベストミックス)を将来的にどうするか早期に詰めなければならない」と、原発を含む議論を求めるが、書きぶりは比較的おとなしめ。読売は「福島第一原発事故以来、ほとんどの原発が停止し、化石燃料の発電に大きく頼っている。目標達成のためには、安全性が確認された原発を順次、稼働させることが欠かせない」とさらりと指摘。これに対して産経は「発電で二酸化炭素を排出しない原子力発電の安全利用が不可欠なのに、政府の対応は極めて緩慢であり、消極的にさえ見える。......日本の現況では、原子力の活用による実効性に裏打ちされた削減策の構築が急務である」と、政府に発破をかけているのが目立つ。

   対する脱原発3紙で、石炭火力中心に論じる朝日と毎日は、脱原発はいわば自明の前提ということか、直接言及していないが、東京は「温暖化対策の面から見れば、石炭火力も原子力も、すでに『終わったエネルギー』なのである」と、切って捨てている。

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