シャープの株式が2017年12月7日、約1年4か月ぶりに東京証券取引所第1部で取引された。液晶パネル事業の不振などにより債務超過に陥り、16年8月に1部から2部に降格していたが、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業傘下で経営再建を進め、1部復帰が認められた。短期的な目標を見事に達成した戴正呉社長だが、この先、どんな成長を遂げるのか、真価が問われそうだ。
「昨年8月、東証1部復帰を果たすという強い決意で、片道のフライトチケットで日本に来て社長に就任した。本日、ようやくこの目標を果たすことができた。株主、取引先、お客様、社員とその家族など、すべてのステークホルダーの支援に感謝する」。東京証券取引所内で記者会見した戴社長は、謝意を述べた。
「8K」のロゴが入った真っ赤な野球帽
戴社長を含め、記者会見に臨んだ役員陣は「8K」のロゴが入った真っ赤な野球帽をかぶり、シャープの8K技術をアピール。鴻海流の「商魂」をトップ自ら示してみせた。12月1日開始の70~40Vの大画面アクオスが当たるキャンペーン「シャープ8Kテレビ誕生祭」に加え、対象商品購入でもれなくギフトカタログがもらえる「シャープ白物家電60周年感謝祭」も12月7日にスタート(いずれも12月31日まで)。冬のボーナス商戦を狙い、一気に攻勢をかける。
鴻海の傘下入りで、シャープはめざましい復活を遂げた。2016年と17年の上半期の経営数値を比べると一目瞭然だ。売上高は9196億円から1兆1151億円と1.21倍に、当期純損益は454億円の赤字から347億円の黒字に転換した。設備投資は274億円から732億円と2.67倍に、新卒採用は142人から312人へと2.2倍になった。従業員1人あたりの年間平均給与は17%増加し、株価は約4倍になった。業績の急回復について戴社長は「シャープはもともと実力がある。金脈と同じだ」と述べ、自分は実力を引き出しただけとの認識を示した。
徐々に権限委譲を図る構え
1年前、戴社長は「1部に復帰したら台湾に帰る」と公言していた。この点について、記者会見では「社長を退任したいという気持ちは今も変わっていない」としつつも「中期経営計画の達成は使命。最終年度の19年度まで全力をあげて取り組む覚悟だ」と述べ、当面は社長職を続ける考えを示した。ただ「次期社長育成のための共同CEO(最高経営責任者)を社内外から選ぶ。すぐ検討したい」とも述べ、徐々に権限委譲を図る構えもみせた。
中期経営計画では「人に寄り添うIoT」「8Kエコシステム」をキーワードに、「グローバルでの事業拡大」「ビジネスモデルの変革」「経営基盤の強化」を掲げている。2019年度の数値目標は売上高3.25兆円、営業利益1500億円だ。だが未知の領域が多いだけに、達成できるかは予断を許さない。
記者会見で戴社長は「飛躍的成長を遂げる」と宣言した。「有言実現する」とも強調した。戴社長の手腕が試されるのは、これからなのかもしれない。