日本企業の代表
では、なぜ東レが週刊文春の取材対象となったのか。ネットの書き込みが発端なのか、真相はわからないが、東レが現職の経団連会長の出身企業であることが大きな理由であることは間違いないだろう。
経団連会長は「日本を代表するモノ作りの製造業」から選ばれるのが慣例で、日本企業の代表でもある。現職の会長会社が不祥事を起こすのは前代未聞で、国内外に日本企業のマイナスイメージを与えることになる。榊原会長は記者団に「経団連会長として企業倫理、法令順守の徹底を呼びかけている最中に、自分の膝元でこの事態が発生したことを本当に重く受け止めており、慙愧に堪えない」と述べた。
取引先が要求した規格からはずれた製品を出荷していたことが後日わかり、取引先に説明して納得してもらうケースがあることは、三菱マテリアル子会社の三菱アルミニウムでも明らかになった。これをマスコミが「不正隠し」と呼べば、その通りかもしれない。神鋼問題をきっかけに、神経質になった素材メーカーがこれまでの商慣行を改め、取引先への説明だけでなく、マスコミに漏れて変に報道されるのを恐れて、自ら事実を公表するケースは今回の東レに限らず、他の大手企業で起きてもおかしくなさそうだ。