40歳代で高血圧の女性は将来、認知症を発症するリスクが高いとする研究結果が神経科学誌「Neurology」(電子版)の2017年10月4日号に発表された。
一方、男性では40歳代の高血圧は認知症には関係ないという結果が出て、専門家の間では疑問視する声も出ている。
正常な血圧の人に比べ、65~73%も認知症リスクが高く
同誌の論文要旨によると、この研究をまとめたのは、医療保険・病院経営など米国最大の医療サービス団体「カイザー・パーマネンテ」研究部門のパオラ・ジルサンス博士らのチームだ。これまで、高血圧の高齢者は認知症の発症リスクが高いことはわかったいたが、50歳前の中年期の高血圧がリスク要因になるかどうかは明らかにされていなかった。
そこで、ジルサンス博士らは、カイザー・パーマネンテが保管している男女5646人の医療記録と健康調査データを用い、1964~1973年(平均年齢33歳)と、1978~1985年(同44歳)の時点での高血圧の有無と、1996年(同60歳)から2015年(同80歳)までの認知症リスクとの関連について調べた。対象者を33歳から80歳まで、約47年間追跡調査したわけだ。
調査期間中に532人(9.4%)が認知症と診断された。その結果、30歳代での高血圧は認知症リスクに関係していなかったが、40歳代で高血圧の女性は、正常血圧の女性と比べ、認知症リスクが65%も高いことが分かった。また、30歳代では正常血圧だったのに40歳代に高血圧になった女性では、認知症リスクが73%も高くなった。こうした傾向は、喫煙、糖尿病、過体重などの要因を考慮してもはっきり認められた。一方、男性では40歳代の高血圧とその後の認知症リスクとの関係は認められなかった。
こうした結果について、ジルサンス博士は論文の中でこうコメントしている。
「今回の調査で、これまで考えられていたよりも早い時期から高血圧が脳に悪影響を及ぼす可能性が示されました。男性の高血圧が、認知症リスクと関係なかったのは、認知症になる前に死亡する確率が高いこともあると思います。しかし、男性より女性の方が認知症になる人が多いのですから、女性は早い時期から自分の血圧について関心を持つべきです」