米国のティラーソン国務長官が訪問先のウィーンで2017年12月7日(現地時間)に記者会見し、トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都に認定し、国際社会から批判が相次いでいる問題に言及した。
首都の認定については「現状の追認」だとしてトランプ氏の判断に理解を求める一方で、テルアビブにある米大使館のエルサレムへの移転について、「急いで行うわけではない」と発言した。ティラーソン氏は米政府内ではトランプ氏の決定に反対していたと報じられており、移転についても「すぐに作業を始める」ことを求めるトランプ氏との温度差が浮き彫りになったとも言えそうだ。
約20年にわたる政策判断をトランプ氏が覆す
エルサレムの問題をめぐっては、米議会が1995年にイスラエルの首都と認定し米大使館も移転するように大統領に求める法案を可決。ただ、歴代の米政権は安全保障上の理由で執行を見送ってきたという経緯がある。この20年以上にわたって続いてきた政策的判断をトランプ氏が覆した。
ティラーソン氏は、イスラエルの首相官邸や裁判所がすでにエルサレムに置かれていることを理由に、トランプ氏の決定は
「現状を追認したにすぎない」
と説明。トランプ氏がイスラエルとパレスチナの間の交渉を引き続き支援すると述べたことを引き合いに、
「イスラエルの最終的な地位は当事者間の交渉に委ねられている」
とも述べた。
大使館の移転については、トランプ氏から移転について作業を進めるように指示があったとして、
「急いでやるわけではない。用地を購入したり、建物の設計をしたり、建設したりしなければならない。一晩でできるようなことではない」
と、ある程度の時間が必要になるとの見方を示した。
更迭報道も相次ぐ
一方、トランプ氏はイスラエルを首都に認定すると表明した12月6日の声明で、国務省に対して
「すぐに建築家、技術者、設計士を雇用する作業を始める」
ことを含めて移転に向けた準備を進めるように指示したとしており、スピード感には差がありそうだ。
ワシントンポスト紙は12月6日、ペンス副大統領らはトランプ氏の判断に賛成し、ティラーソン氏やマティス国防長官は治安上の理由から反対していたと報じた。こういった立場の違いが、今回の発言にも影を落としている可能性もありそうだ。
ホワイトハウスがティラーソン氏の更迭を検討しているとの報道も相次ぎ、ティラーソン氏は報道を繰り返し否定。
「誤報で、新たな情報源を探すべきだ」
と火消しに追われている。