グーグルが医療や健康関連の検索結果に変更を加えた。「例えば医療従事者や専門家、医療機関等から提供されるような、より信頼性が高く有益な情報が上位に表示されやすくなります」とある。
医学的な根拠が不明だったり、他所から盗用したりした記事を大量に掲載していた情報サイト「WELQ」と、当時の運用元だったディー・エヌ・エー(DeNA)が厳しく批判されてからおよそ1年。今回の改善で、「ニセ情報」がどこまで排除されるだろうか。
「およそ60%に影響します」
グーグルは2017年12月6日、ウェブマスター向け公式ブログで、今回の変更は「医療や健康に関する検索結果の改善を意図したもの」で、「医療・健康に関連する検索のおよそ60%に影響します」と説明している。かなり大きな改変といえよう。
ここで「WELQ問題」を少し振り返ろう。WELQではSEO(検索エンジン最適化)の手法を用いて、検索結果が上位に来ることをねらうあまりに特定のキーワードを盛り込むことが重視された半面、医師の監修を経ず内容の正確性が疑わしい記事が大量生産された。その結果、グーグルであるワードを入力して検索すると、「トンデモ医療記事」が続々と表示されるようになったのだ。
2016年10月23日、SEO専門家の辻正浩氏はツイッターで、WELQの記事についてこう指摘した。
「[死にたい]検索1位のDeNAのWelq。色々ダメな所だけどこれは最悪だ」
検索窓に「死にたい」と入力すると、WELQの記事が真っ先に表示されるという「仕掛け」だった。さらに記事内容は、根拠薄弱。心から悩んでいる人が記事をクリックしたら、何を思うか――。このツイートが、その後の問題解明の端緒となったと言える。
今回のグーグルの発表に当たり、辻氏もツイートを連投し、自身で分析もしている。12月6日付投稿のひとつは、「ある程度見られましたが、これはかなり望ましい動きなんじゃないでしょうか。大規模な動きなので完璧ではないでしょうが、対象検索語句の判定も、下げるサイトの判定もかなりうまく出来ているように思います」と書かれていた。問題のあるサイトの表示が完全になくなったわけではないとしつつも、同日の別のツイートで「私としては今回の調整は激しすぎるもののそれが日本のウェブには必要だったと思うので称賛されるべき状況と思います」と評価した。
医療機関や製薬会社が運営するサイトが上位
ごく簡単ではあるが、いろいろな病名を入力して検索結果を観察してみた。「胃がん」「肺がん」「乳がん」といったがんについては全般的に、最初に国立がん研究センターが、その下に医療機関や製薬会社が運営するサイトが案内された。
記者は2016年10月、深夜に腎臓結石の痛みに襲われた。この時、症状を和らげる手がかりを探そうと激痛のなかでウェブ検索をした。だが当時は、個人の体験談や「まとめサイト」の表示が多くて信頼できるか確信が持てず困った記憶がある。試しに今一度「腎臓結石、痛み」で検索すると、病院やクリニック、大手メディアの記事などが結果として表示された。
一方で、明確な病名ではないが心身の不調を示唆するワードを入力すると、言葉によっては信ぴょう性が疑わしいサイトが上位に出てくるケースもあった。
医療や健康にかかわる記事や情報をインターネットで発信する側は、その責任を問われると同時に「分かりやすさ」も求められる。「バズフィードジャパン」のライターで、WELQ問題を早くから追及してきた朽木誠一郎氏は12月6日、グーグルの発表について「医療記者として注目してもらいたいのが、情報発信する医療関係者へ向けたメッセージが含まれていたこと」とツイートした。グーグルは発信側に対して、一般ユーザーが検索で見つけにくくならないように専門用語の多用を控えるよう要請している。